大切な人と「居心地のいい関係」を作るための“境界線”って何?【人間関係】

職場でも友達でも恋人でも、一緒にいて楽しいしまた会いたい、一緒に過ごしたいと思うのはリラックスしている自分を知るからですよね。

それが居心地のいい関係で、自分だけでなく相手も同じ気持ちだと実感できるからこそ愛情と信頼が強くなります。

「過ごしやすさ」を作るものは何なのか、好きだなと思う人と一緒に愛情を育てるには何を意識すればいいのか、お伝えします。

過ごしやすい関係を作るためにやりたいこと

1: 自分にとってどんな人が過ごしやすいのかを考える

大勢で騒ぐのが好きな人もいれば一対一でおしゃべりをするのが好きな人がいるように、人には「過ごし方の相性」があると感じます。

合う人と一緒なら何時間でもストレスなく過ごせますが、反対にどうしてもネガティブな感情が湧いてしまう、早く離れたいと思う人がいるのもたしかです。

相性の悪さは、相手の性格や人間性が自分とは違うことによるものも大きいですが、それを何とかしようとしても叶いません。

合わない人とは無理に向き合おうとせず、適切な距離で接していくのがストレスを減らすコツ。この「距離感」が人間関係では居心地のよさを左右すると筆者は考えています。

自分にとってどんな人が一緒にいて気楽か、過ごしやすいのか、それがわかれば「大事にするべき人」が見えてきます。

関係を前向きに育てるにはお互いに愛情と信頼を持つのが必須です。自分だけが理想の形を目指しても相手がそう思っていなければすれ違いを避けられず、「相性がいいと思っていたのにいつしか嫌悪感を抱くような人になってしまう」ことも。

居心地のよさは距離感が決めることを頭に入れて、どう接していけば「お互いに」そう思えるのかを考えたいですね。

その距離感を正しく見るために必要なのが、自分と相手の間に引く境界線です。

2:「自分と相手は違うのは当たり前」という前提を持つ

たとえば、相手も気に入ってくれるだろうと「自分が好きなもの」をプレゼントしたら微妙な反応が返ってきて、その後何となく遠ざけられている気がする、と話す男性がいました。

自分の好きなものを相手も気に入るとは限らず、贈るのならその前提を忘れないことで相手の反応を深く受け取らずに済みます。

贈った後で距離を置かれてショックを受けるのは、相手に「こうするべき」と自分の理想を押し付けているからです。相手の気持ちを無視しているのですね。

プレゼントをどう受け止めるかを決めるのは相手であって、自分ではありません。

それはコントロールできない部分です。逆の立場なら表面上うれしそうな反応を返しても、気に入らなければ「どうしてこんなものを贈るのだろう」と相手の気持ちをいぶかしむこともあるはずです。

自分と相手は違うのが当たり前、その人にはその人の感じ方があるという境界線を認識しましょう。

「気に入ってもらえるかはわからないけれど、贈りたいから」という気持ちが境界線を引くことで、相手の意思を尊重する姿勢です。

相手は、贈られたときに「自分はどう感じてもいい、それをこの人も受け止めてくれる」という安心感を持てれば、プレゼントしてくれたことに素直に感謝して感想を口にできるはず。

贈られたものに関心を持てるのはこの自由さがあるからで、「相手と自分は違っていてもいいのだ」という実感が、そのまま愛情と信頼につながります。

最初から求められる反応が決まっている状態で何かを贈られたら、誰だって窮屈さを覚えるし相手に対していい感情は湧きません。

「互いに違うのが当たり前」の境界線が、居心地のいい距離感を作るのですね。

3:「違う」ことは否定ではないと認識する

上記のケースで続けると、男性は「期待通りの反応をもらえなかったこと」「その後何となく気まずい態度をとられること」に不満と悲しみを覚えていました。

男性がこだわっている部分を突き詰めると、「相手のためにと向けた好意が無駄になったこと」が悲しく、また「自分を否定されたように感じる怒り」で相手の状態を責めているとわかります。

一方で相手の振る舞いを尋ねてみると、「ありがとうと感謝の気持ちを伝えているし、これに興味がないことは以前話したはずと言っており、今は触れる気になれないと自分の気持ちをきちんと口にしている」のが事実でした。

相手がその状態であるうえで「自分は好きだから」と贈ったのであれば、そこには「あなたにも好きになってほしい」の下心があったはずです。それを否定されたのが男性はつらかったのですね。

期待通りの反応が返ってこないことを拒絶と受け取るのは短絡的で、繰り返しますが相手には相手の感じ方があり、それをこちらが決めることはできません。

「こんなものを贈るあなたが嫌いだ」と言われたのなら拒絶ですが、そうではなく「ありがとう」とまず言って受け取り「それでも今は触れる気にはなれない」とするのは、相手は自分のスタンスを見せただけになります。

気まずそうな態度をとるのは、贈ってくれた人の期待に沿えなかったことへの罪悪感だったり今後のつながりに不安を覚えていたりの可能性があり、それもまた相手の事情でこちらには手が出せません。

相手は男性との間に境界線を引いているから自分の気持ちに嘘をついてまで馴れ合うことはせず、贈ってくれたことには感謝の気持ちを持って伝えていると筆者は感じます。

相手にとって「同じでない自分」は男性を否定したことにはなっておらず、この違いを男性は見ていないといえます。

4: すれ違いが起こらないポイントは境界線

プレゼントが喜ばれず溝が生まれてしまうというすれ違いはよく聞きますが、たいていは贈った側が相手の反応に過度な期待や理想を持っており、それが叶わなかったことでネガティブな感情を持ってしまうのが原因です。

贈られた側は自分の考えるつながりを今後は維持できないと感じ、離れることで諦めているのも見ます。

反対に、意図しないものを贈られてもその後のつながりに変化がない人たちもいます。その違いは「そういうこともあるのが当たり前」だと了解する姿勢です。

そのプレゼントが好きなのは自分であって相手がどうかはわからない、だから期待通りに受け止めてもらえなくても「仕方ない」、相手を責める気持ちが起こらないのは好みが違うことが自分を否定しているとはならないから。

自分と相手が違う人間なら「同じでない部分」があるのは当たり前で、合わないところは「置いておく」で終われます。

境界線を引けているので無茶な期待や理想を持たず、相手の在り方そのものを受け止める器があるのを感じます。

そして、違うからこそ「合う部分」を大事にしたい気持ちがあり、そこに集中するので「意図しないプレゼント」に関係が左右されないのですね。

「居心地のよさ」は「互いの違いを受け入れている」状態

心の距離が近くなれば、自分の好きなものを相手と共有したいし一緒に楽しみたい気持ちは誰だって持ちます。

そして、相手の好きなものも等しく知りたいし楽しみたいと思うのが能動的に愛する姿勢であって、そんなお互いの姿を見ることで愛情と信頼は強くなっていきます。

そのやり取りですれ違うと、「好きだったのに理想と違う人だった」「せっかく好意を持ったのに傷つけられた」のように自分の側からしか相手の在り方を判断せず、せっかくの縁を逃してしまいます。

「自分と違うこと」は否定ではなく、相手には相手の在り方があるだけだと境界線を引けば、そこにこだわるのではなく「合う部分」で相手との絆を深めていく意識が持てます。

境界線は自分と相手をありのままで見ようとする勇気であって、みずからそれを引いていく姿勢が向ける愛情を歪めないと筆者は考えます。

「この人とは居心地のいい関係が築けている」と思うとき、負担を感じない距離感が必ずそこにはあるはずで、「無理をしなくていい自分」「リラックスして過ごせる自分」がいます。

その自分を知ってもらうことで相手も同じように思い、引いた線をお互いに大事にしながら好きなものを共有していく器を作るのが、健全な人間関係ではないでしょうか。

居心地のよさは「互いの違いを受け入れている状態」であり、それがありのままの自分でいられる基礎になるのですね。

「線を引かれる自分」は対等と思われているサイン

たまに、自分の好きなものを受け入れてもらえなかったことで相手から線を引かれていると感じ、寂しさを覚えるという人がいます。

気持ちはわかりますが、たとえば好きな人が「実は好きじゃないのに自分のために無理をして好きなフリをする姿」が、果たして幸せといえるでしょうか。

そうではなく正直に「自分は違う」とするのはスタンスをきちんと見せてくれていること、対等な関係だと思うからこそ線を引いて自分の在り方を伝えているのであり、嘘をついていない状態ではないでしょうか。

その姿を受け入れる勇気は、等しく自分も相手に「違うことを知られてもいいのだ」の信頼になり、気持ちを伝えやすい距離感を作ります。

筆者が知っている長年幸せな交際を続けているカップルや強い友情で結ばれている友人には、この「違うことを伝えても居心地のよさが変わらない」が確実にあって、良い状態が続くのはまず自分がありのままでいられるからです。

愛情も信頼も今すぐ持てるものではなく、また誰とでも築けるものではないからこそ、それが叶う人の存在は何よりも大切にしたいですよね。

線を引かれる自分は拒絶ではなく対等だと思われているサインだとわかれば、そこからストレスのない距離感をふたりで作っていけることを意識するのが正解といえます。

好きな人、好きな友人ならずっと楽しく幸せな関係でいたいと思うのは当たり前で、そのためにはお互いにとって無理のない付き合い方を考えていくことが重要、それを決めるのが距離感です。

望む居心地のよさが叶わないと知ったときは潔く引くことも自分のためで、そのときも無理なく関われる距離感をみずから作っていく姿勢が不毛な衝突を避けられます。

どんな人とも正しい境界線を引く意識を持ち、自分を大切にできるつながりでいたいですね。

(mimot.(ミモット)/ 弘田 香)

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