次世代救済の道開けるか カネミ油症の健康影響調査 23日、福岡で結果報告 

 カネミ油症被害者の子や孫ら次世代への健康影響調査を進めている全国油症治療研究班(事務局・九州大)と被害者団体との会合が23日、福岡市で開かれる。研究班は、これまでの調査結果を示す見通し。昨年2月に公表した中間報告では、次世代の多くが倦怠(けんたい)感など何らかの症状を抱えていることが判明。今回の報告で医療費補償などの救済に道を開くことができるのか、関係者は注目している。

 汚染油を直接食べていない子や孫への影響を巡っては、油症の主因ダイオキシン類が母親の母乳や胎盤を通じ、移行している可能性が指摘されている。しかし大半がダイオキシン類の血中濃度を重視する現行の基準を下回り、認定されていない。
 長崎県諫早市在住で、母親が油症認定患者の下田恵さん(34)もその一人。幼いころから体調の異変が続き、現在も頭痛や倦怠感、皮膚症状などがある。しかし毎年受けている油症検診では、認定申請が却下され続けてきた。23日の会合を前に、「直接油を食べた人たちの診断基準を私たちにそのまま当てはめている。調査報告が基準を変えるきっかけになれば」と語る。
 次世代調査は、被害者団体の要望を受けて、研究班が2021年8月から開始。認定患者の子や孫に調査票を送付し、自覚症状などを問うアンケートを実施した。
 油症を秘匿しわが子にも伝えていない被害者は少なくないとみられ、このため次世代の調査参加者数は限られるとの見方が当初はあった。しかし昨年の中間報告では予想を超える388人が協力。大多数が何らかの自覚症状を抱えていた。倦怠感は165人、頭痛は154人と、いずれも4割。皮膚症状も、乾燥肌とかゆみがそれぞれ約4割など。
 先天性疾患は、早産・低体重(20人)、欠損など歯の病気(19人)とも5%前後。500人に1人程度で生まれるとされる口唇口蓋裂は3人が回答した。22年には、この388人に加え、新たに33人に調査票を送付した。
 研究班は、より客観的なデータを集めるため、毎年行っている油症検診も受診するよう調査参加者に依頼。油症次世代被害の医学的な根拠を示すための解析を進めてきた。
 研究班は報告書を厚生労働省に提出する。救済につなぐことはできるのか。基準見直しなどに向け、政治的解決も求められそうだ。五島市出身で、12年の油症被害者救済法制定などに取り組んだ谷川弥一衆院議員は「基準改定に必要な医学的根拠が出てきたら責任を持って取り組む」と話す。

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