「まだ課題は山積」行動制限ない夏 多くの登山客にどう対応?=富士山世界遺産10周年

世界遺産・富士山にこの後訪れるのは行動制限のない夏山シーズンです。多くの登山客を迎えるにあたって課題が山積みです。

日本一の高さを誇る富士山。壮大で美しい姿は、日本のシンボルです。人々が抱いた畏敬の気持ちは富士山信仰へとつながり、多くの芸術家の創作意欲をかき立ててきました。富士山は人類にとっても「顕著で普遍的な価値」がある世界の宝。静岡県と山梨県が中心となり、1990年代から世界遺産への登録を目指し、環境の保全などに取り組み、国内の機運を高めました。

そして2013年6月22日…。

<芝田信晃記者>

「たった今、富士山が世界文化遺産に登録されました」

カンボジアで開かれたユネスコの世界遺産委員会で富士山の世界文化遺産「登録」が正式に決まったのです。あれから10年…。

富士山の麓の自治体では6月17日・18日に、10周年を祝うイベントが開かれました。

<富士市立高校の生徒>

「私に勇気を与え続ける富士山。私に希望を与え続ける富士山。私に幸せを与え続ける富士山。いつもいつも本当にありがとう」

<女の子>

Q.富士山好きな人 手を挙げて

「はーい」

世界に富士山を知ってもらう絶好の機会でしたが、10年のうち、ここ3年間は新型コロナに水を差されました。ようやく行動制限などがなくなり、富士山の観光は“復活元年”といえます。

6月20日、富士山の登山道のうち、富士宮ルートの5合目から6合目の冬季閉鎖が解除されました。宝永山までのハイキングが可能になり、待ちわびた人が早速、登っていきました。

<三島からの登山者>

「空が地上とは違ってきれいなので、それを楽しみに」

<埼玉からの登山者>

「うれしいと思います。最高です。頑張ります」

こちらは富士山の登山者数の推移。新型コロナの影響で2021年、2022年はコロナ前よりも登山者数が少ない状況でした。しかし2023年は、新型コロナが5類に移行されるなど、登山者数がコロナ禍前の水準、もしくはそれ以上になる可能性もあります。

<外国人登山客と日本語で話すためのセミナー参加者>

「『禁止』は難しいですよね。『できません』『しないでください』かな」

多くの外国人登山客も予想される富士山。十分な休憩をとらずに登る「弾丸登山」によるけが人や病人の増加も懸念されているのも実状です。

<富士山表富士宮富士登山組合 山口芳正組合長>

「今年は、各山小屋がほとんど平日は満室状態。(これ以上)多くのお客さんに来てもらっても宿泊先がない」

ある山小屋の関係者は「過去50年の中でも予約が一番多い」と話す2023年。県内の山小屋の運営者などが集まる協議会の中では入山規制を検討するべきといった声もあがっています。

<富士山世界遺産センター 遠山敦子館長>

「登山者がこれからどうなっていくか分かりませんけど、過密になってその危険にならないようにするにはどうしたらいいかとか、そういう大きな課題がいっぱいあります」

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