【シンガポール】同性婚への賛同者が増加[社会] 若い世代中心に=仏社調査

シンガポールで若い世代を中心に同性婚への賛同者が増えている(Image by Alexander Grey from Pixabay)

シンガポールで同性婚に対する意識が変化している。フランスの調査会社イプソス(Ipsos)が公表した2023年版「LGBT+(性的少数者)プライド調査報告書」によると、「同性カップルにも法的な婚姻が認められるべきだ」と回答したシンガポール人の割合は32%となり、前年調査の27%から5ポイント上昇した。若い世代や女性を中心に容認する傾向が広がっている。

イプソスは世界30カ国で2月17日~3月3日に調査を実施。計2万2,514人から回答を得た。

シンガポールでは21~74歳の国民約1,000人が回答。同性婚が認められるべきだと回答した人に加え、「同性カップルは、婚姻以外でなんらかの法的な承認を得られるべきだ」と回答した人が23%となり、同性婚に支援的な立場の人が計55%と半数を超えた。

「同性カップルにも法的な婚姻が認められるべきだ」と回答した割合は、男性が28%だったのに対し、女性は35%とやや高かった。世代別では、ベビーブーマー世代(1948~64年生まれ)が16%、X世代(65~80年生まれ)が25%であるのに対し、ミレニアル世代(81~96年生まれ)は41%、Z世代(97年以降生まれ)は40%と大きく開きがあった。

若い世代や女性を中心に、同性婚に対して支援的な姿勢の人が多いことが浮き彫りとなったが、世界全体で見ると低水準だ。「同性カップルにも法的な婚姻が認められるべきだ」と回答した人の割合を国別で比較すると、シンガポールは30カ国平均の56%を大きく下回り、ポーランドと同率で27番目だった。

首位はオランダとポルトガルが同率の80%。最下位はトルコの20%となっている。日本は35%で25位だった。

■当面は現行の婚姻制度維持

シンガポールの人々の同性婚に対する意識の変化は見られるものの、政治的な影響力はまだ低いようだ。リー・シェンロン首相は2022年8月の施政方針演説(ナショナルデー・ラリー)で、男性同士の同性愛行為を禁じる刑法377A条を廃止する意向を表明。同年11月には同条項の廃止が可決され、今年に入り廃止された。

性的少数者の中でもとりわけ同性愛者に対する権利侵害の象徴とも取られてきた377A条の廃止は、シンガポールにとって大きな変化の一歩となった。ただ廃止論と同時に活発となった同性婚に関する議論に対して政府は、当面は男女間の結婚を基本とする現行の婚姻制度を維持する方針も示した。

シンガポールでは現在、「女性憲章」または「シャリア法(イスラム法)」で法的婚姻が規定されている。35歳未満の場合、独身者は公営住宅(HDBフラット)を購入できず、結婚した男女のみが購入できるなど、次世代を生み育てる男女の婚姻を前提に制定された各種規定も多いことや、宗教的価値観などの観点が考慮されているようだ。

イプソスの調査によると、シンガポールの性的少数者の割合は9%で、30カ国の平均と同じだった。同性カップルが養子を迎えて子どもを育てていくことについては、57%が賛成の立場を取っている。

イプソス・シンガポールのメラニー・ウン・ディレクター(企業広報担当)は「同性カップルの権利に対する民意は若い世代と女性を中心に変化している。性的少数者を自認する人の数も増えており、性的少数者と関わりを持つ人の数も増えるだろう」と述べた。

シンガポールではあす24日に、性的少数者の権利保護などを訴えるイベント「ピンクドット」が開催され、国内の関連団体が一堂に会する予定だ。

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