埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(11)】泰清倉庫・小山展弘代表取締役社長、さまざまな流通を提案

リニューアルされた本社社屋と小山展弘社長。建物内には千パレット収納可能な電動ラックがひしめく

 埼玉県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■泰清倉庫(戸田市)小山展弘代表取締役社長

 戸田市の南側、南町から氷川町にかけては多くの物流センターや倉庫が軒を連ね、流通の要所となっている。その中で明るいトーンのロゴがひときわ目を引くのが「泰清倉庫」の本社だ。建物は今年の3月にリニューアルされたばかり。頻繁なブログ更新や交流サイト(SNS)の活用など、小山展弘社長(47)は「新しいものに取り組んでいこう」という思いを強く持つ。

 事業の柱は保管・流通加工・配送・賃貸の四つ。それらを組み合わせたさまざまな形の提案ができること、小ロット・小規模のものでも対応できることが強みだ。流通加工とは商品に手を加え付加価値をつける作業のことで、そうした業務の一つとして書籍の改装(カバーがけ)も行っている。近年話題になったカズオ・イシグロ氏の、ノーベル賞受賞時の文庫の帯取り換えなどはほとんど同社で担当したという。

 社員教育、人材育成にも力を注ぐ。社員のキャリアパスを独自に作成しているほか、人事評価制度も積極的に導入、年2回の面談を通じて個別指導を手厚く行っている。こうした取り組みなどが評価され、県の「多様な働き方実践企業」ゴールド認定もこの春受けることができた。

 会社のロゴマークは緑(自然)と黄色(幸せ)の真ん中に、会社のイニシャルの「T」が空白として隠れている。「われわれの仕事は“空気”のようなもの。目には見えないけれども、なければ生きていけないし、よどんでいれば分かってしまう。これからも澄んだ空気のような存在でありたい」と語るその先には、これからのビジョンがきらめいて見えているようだ。

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