「対策がない」イセエビ漁獲量 4年で半減 有数の産地で何が?イベントに影響も=静岡・南伊豆町

全国有数のイセエビの産地として知られる静岡県南伊豆町。6月23日、町長がそのイセエビについて「4年間で漁獲量が半分になっている。これといった対策がないのが現状」と訴えました。一体、何が起きているのでしょうか?

テーブルいっぱいに並ぶのは県内の一大産地・南伊豆で獲れたイセエビの料理。香ばしい鬼殻(おにがら)焼き。イセエビを丸ごと入れたぜいたくなラーメン。やっぱり、お造りが一番という人も多いでしょう。

<柴田寛人記者>

「イセエビのお刺身、いただきます。プリプリ、コリコリしておいしいです。この南伊豆で獲れるイセエビ、最近は漁獲量が年々減少していて、毎年秋の恒例のイベトにも影響が出るかもしれないというのです」

23日、開かれた南伊豆町長の記者会見。

<南伊豆町 岡部克仁町長>

「(イセエビの漁獲量が)4年間で半分になっている。これといった対策がないのが正直なところ。9月の解禁になってからの漁獲高を見ながら、伊勢海老まつりを早めに切り上げるということはあろうかと思う」

町長が危惧しているのは、毎年秋に町をあげて開催している「伊勢海老まつり」。イセエビ漁の解禁にあわせて町内の民宿などで宿泊や飲食を格安で提供する「伊勢海老まつり」。観光地・南伊豆にとって秋の重要なイベントだけに、中止や規模の縮小となれば観光業への大きなダメージも予想されます。

<青木さざえ店 青木孝秀さん>

「(2022年度は)伊豆半島全体で少なかったですね。夏に向けて不安ですね」

例年9月から春先にかけて解禁されるイセエビ漁。全国有数のイセエビの産地として知られる南伊豆町ですが、過去10年の水揚げ量を見てみると悪化の一途をたどっています。特に2019年と2022年を比較すると、わずか4年のあいだに半減しています。一体、何が起きているのか?南伊豆のイセエビを長年調査している県水産技術研究所は、漁獲量の減少についてこのように分析します。

<県水産・海洋技術研究所 伊豆分場 長谷川雅俊主任>

「黒潮の大蛇行が継続していて、南伊豆の海に大きな影響を与えています。大蛇行の影響で水温が高くなる。そうすると海藻、特にカジメの生育が悪くなる」

不漁の原因として考えられているのが「黒潮の大蛇行」です。大蛇行の影響で海水温が高くなり、カジメの生育が遅れます。すると、カジメを食べる貝や小さなカニが減少。それらをエサにするイセエビも減っていくという連鎖です。さらにイセエビの漁師の減少や山間地の工事による海への土砂流入などさまざまな要因が重なり、南伊豆のイセエビは減少傾向にあるといいます。

<青木さざえ店 青木孝秀さん>

「こういったこともあろうかとイセエビについては仕込んでいる。生きたイセエビをシメて冷凍してある。(伊勢海老まつりに)十分対応可能な量は確保している」

コロナ禍を耐え、ようやく復活の兆しが見えてきた観光業。イセエビの不漁は南伊豆町の観光を大きく左右するだけに、観光に携わる人たちは資源の回復を祈るばかりです。

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