雨降って関係深まる。SUGOの戦略ミスから気持ちを切り替えて後半戦に臨むリアム・ローソンとTEAM MUGEN

 スーパーフォーミュラ第5戦SUGO、戦略面での判断ミスにより自慢の好ペースを発揮できず5位に終わったリアム・ローソン(TEAM MUGEN)。レース後は戦略面のミスに少しエキサイトしている様子が印象的だった。それから数日経って迎えた富士での公式テスト、ローソンはすでにチームとともに前回の分析を終え、次なる目標達成と課題克服に向けて進み始めている。

 SUGOでは優勝した宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)に匹敵する好ペースを持っていたローソンは、ピットストップのタイミングを逸してレース後半までタイヤ交換を引っ張ることになり、結果的に5位でレースを終えた。

 スーパーフォーミュラの専門アプリ『SFgo』では、チェッカー後のクールダウンラップで、ローソンがチームに対して戦略のことを問い詰めるやり取りが公開されており、メディアミックスゾーンでも怒りが表情に出ている様子だった。

 それでも、マシンを降りて時間が経つと、担当の小池智彦エンジニアと冷静に話し合っていたほか、テストまでのインターバルで、チームと問題の分析と再発防止に向けた話をしていたことを明らかにした。

「戦略はひとりで決めているわけではないから、しっかりとSUGOで起きた問題について、チーム全体と話し合った」とローソン。

「改めて、何が間違っていて、何をすれば良かったのか、また我々に何が必要なのか。一番重要なのは同じ失敗を2度とやらないこと。今年は力強いシーズンを過ごすことができていると思うから、これ以上ミスをしてしまうと良くないと思っている」と、公式テスト初日に前回のSUGO後について話したローソン。

「(宮田)莉朋は安定して強くて、取りこぼしているレースがない。そこに挑んでいくのはタフではあるけど、富士はすでにレース経験があるコースだし、土曜日(第1戦)の時はクルマもよかった。SUGOは僕自身がコースを覚えるのに必死になっていたところもあったから、ここから先は余裕を持ってレースウィークに臨めると思う」と、取りこぼしてしまったSUGOの1戦には区切りをつけて、現在ランキング首位につける宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)に対しての攻略方法を模索していた。

 ローソン担当の15号車の小池エンジニアも「話はちゃんとしました。出来ることは“あそこから学ぶことだけ”ということで……それはドライバーも分かっているし、切り替えも上手いです」と、SUGOでの失敗を引きずっている様子は見られない。

 逆にスーパーフォーミュラ初年度のローソンが、ここまでポイントを稼いだのは嬉しい誤算だったようで、「SUGOまでのレースで、想定していたよりポイントを獲れて、ランキング2位で迎えられるとは思っていませんでした」と小池エンジニア。

 そんななかで行われている今季2度目の公式テスト。今まではシーズン中にテストがなかったことと、SF23になってクルマやタイヤの特性について理解し切れていない部分もあることから、今回は貴重なテストの機会となっている。

2023スーパーフォーミュラ富士公式テスト リアム・ローソン(TEAM MUGEN)

 午前のセッションでは、テストメニューの関係でニュータイヤを使わなかった15号車。それでも、ユーズドタイヤを履いて1分22秒919のトップタイムを記録。ただ、これも“一発の速さが出切っていない課題”だと小池エンジニアは語る。

「今日の午前中はみんなニュータイヤを使っていなかったのもありますが、(15号車は)15~16周くらい中古のタイヤしか使っていなかったので、意外だなという感じでした」

「午後はQ1・Q2を想定して(タイムアタックを)やりたかったのですけど、途中で雨が降ってきちゃったので、1セットでやめてしまいました。最後、みんなと同じでもう1セット使う予定だったのですけど、それができなかったので、明日の朝ちょっとやってみようかなと思います」と初日を振り返る小池エンジニア。

 初日の走行では雨がパラついたこともあり、予定していたテストメニューを全て消化できなかったローソン&15号車陣営。それでも、小池エンジニアによると、ローソンとはこんな無線のやり取りがあったという。

「雨がパラついちゃって(Q1・Q2想定のシミュレーションを)やらなかったのですが……その後に雨が止んで、リアムが『何でいつもニュータイヤを履いてアタックしようとしたら雨が降ってきて、終わったら(雨が)止むの!』と。僕も『もしかして君は雨男か?』みたいな話をしていました(笑)」

 SUGOを境に本音を言う機会が増えた印象のあるローソン。その本人も、チームと自然にコミュニケーションが取れるようなってきたという実感があるようだ。

「シーズンの開幕時と比べると変わったと思う。最初はすべてが初めてで、それこそスタッフの顔と名前を覚えなきゃいけないし、それぞれのコミュニケーションの取り方も違う。だけど、今はシーズンの半分が終わって、みんなとより自然にコミュニケーションがとれるようになったし、たくさんの時間をすごすことになって、居心地はかなり良くなっている」

「SUGOでのミスを除いては、コミュニケーション面ではうまくやって来られていると思うし、SUGOでの振り返りもしっかりできている。シーズンの初めと比べると、みんなとはより良い関係になれていると思う。一緒に仕事をしていく上ではコミュニケーションを密に取っていくのは大切なことだからね」

 SUGOでの戦略ミスを糧にして、後半戦への原動力にしようとしているローソン&15号車陣営。明日のテストはもちろんのこと、後半戦も引き続き目が離せない存在になることは間違いないだろう。

2023スーパーフォーミュラ富士公式テスト リアム・ローソン(TEAM MUGEN)

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