カネミ油症、被害者の子や孫ら調査 口唇口蓋裂の発生率、一般と比べ高く

油症被害者に対し、研究の結果報告に臨む辻学班長=福岡県博多区博多駅中央街、オリエンタルホテル福岡

 1968年に発生した食品公害「カネミ油症」で、被害者の子や孫らに先天性異常の口唇口蓋裂が生じる割合が、一般に比べると高いなどとする調査結果が23日、被害者らに報告された。調査に当たった全国油症治療研究班の辻学班長(九州大)は「他の先天性疾患にも分析を広げ、結果を積み上げたい」とした。

 調査結果は福岡市で開かれた油症対策委員会で報告された。研究班は2021年から全国の認定患者の子や孫を対象に健康被害の調査を始め、調査票の提出と検診の受診協力を求めている。

 口唇口蓋裂は唇や上顎が裂けた状態で生まれる先天性の病気で、調査対象者292人のうち3人が該当し、一般より割合が高かった。頭痛や月経不順といった自覚症状も一般集団より多い傾向があったが、「今後、血液検査の結果を加味して分析をさらに進める必要がある」とした。

 油症患者の子や孫は、認定基準となるダイオキシン類などの血中濃度が一般人とほとんど変わらず、身体的な症状があっても患者認定されるケースは少ない。調査は本年も実施し、来年2月に経過報告を行う。

 カネミ油症は、カネミ倉庫(北九州市)製の食用米ぬか油に化学物質ポリ塩化ビフェニール(PCB)やダイオキシン類が混入して健康被害が発生。PCBは鐘淵化学工業(現カネカ)高砂工業所で製造された。約1万4千人が健康被害を訴えたが、認定患者は全国で計2370人にとどまる。(小尾絵生)

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