トッテナムのポステコグルー監督が「古橋亨梧を獲得しない」3つの理由

今月、日本代表復帰を果たし、エルサルバドル戦でA代表での4ゴール目を記録した古橋亨梧。

所属のセルティックをスコットランド3冠に導いた28歳は、この夏のプレミアリーグ移籍が噂され、特に恩師アンジェ・ポステコグルーが新監督に就任したトッテナム・ホットスパーが有力視されている。

一方で、移籍の噂は今のところ状況的な推測の域を脱していないようにも見える。

古橋のトッテナム移籍は果たして実現するのだろうか。実現を願いつつも、現実性の側面から逆に「移籍は無い理由」をピックアップした。

スコットランド得点王&MVPの“難しさ”

まずは、スコティッシュ・プレミアシップでの活躍がキャリアアップにどれだけ繋がっているかを調べてみた。

今季を含む過去10シーズンのリーグ得点王、および選手協会(PWA)と記者協会(FWA)がそれぞれ選んだシーズンMVPのリストがこちら。

得点王

2013-14 クリス・コモンズ(セルティック)27点
2014-15 アダム・ルーニー(アバディーン)18点
2015-16 リー・グリフィス(セルティック)31点
2016-17 リアム・ボイス(ロス・カウンティ)23点
2017-18 クリス・ボイド(キルマーノック)18点
2018-19 アルフレッド・モレロス(レンジャーズ)18点
2019-20 オドソンヌ・エドゥアール(セルティック)22点
2020-21 オドソンヌ・エドゥアール(セルティック)18点
2021-22 ヨルゴス・ヤクマキス(セルティック)、
リーガン・チャールズ=クック(ロス・カウンティ)13点
2022-23 古橋亨梧(セルティック)27点

選手協会(PWA)MVP

2013–14 クリス・コモンズ(セルティック)
2014–15 ステファン・ヨハンセン(セルティック)
2015–16 リー・グリフィス(セルティック)
2016–17 スコット・シンクレア(セルティック)
2017–18 スコット・ブラウン(セルティック)
2018–19 ジェームズ・フォレスト(セルティック)
2019–20 なし
2020–21 ジェームズ・タヴァーニア(レンジャーズ)
2021–22 カラム・マグレガー(セルティック)
2022–23 古橋亨梧(セルティック)

記者協会(FWA)MVP

2013–14 クリス・コモンズ(セルティック)
2014–15 クレイグ・ゴードン(セルティック)
2015–16 リー・グリフィス(セルティック)
2016–17 スコット・シンクレア(セルティック)
2017–18 スコット・ブラウン(セルティック)
2018–19 ジェームズ・フォレスト(セルティック)
2019–20 オドソンヌ・エドゥアール(セルティック)
2020–21 スティーヴン・デイヴィス(レンジャーズ)
2021–22 クレイグ・ゴードン(ハーツ)
2022–23 古橋亨梧 (セルティック)

このうち、スコットランドで活躍した後にプレミアリーグでプレーしたのは、ステファン・ヨハンセンとオドソンヌ・エドゥアールの2人だ。

ノルウェー代表MFヨハンセンは、2016-17シーズンに当時チャンピオンシップ(2部)のフラムへ移籍し、2018年にチームとともにプレミアへ昇格。しかしプレミアでは2シーズンで計12試合の出場にとどまった。

エドゥアールはまさに現在、プレミアリーグのクリスタル・パレスに所属。187cmのフランス人FWは、パレス加入1年目の2021-22シーズンに28試合出場6ゴールを記録すると、今季も35試合で5ゴールをあげた。なかなかの実績である。

ただ、クリスタル・パレスは過去10年のプレミアで一度も二桁順位を脱したことがないクラブ。それに対してトッテナムは、8位となった今季が過去10年の最低成績だ。

いくら古橋をよく知るポステコグルー監督が就任したとはいえ、「トッテナム移籍」となると話が変わってくるのが現実だろう。

ケインとリシャルリソンの存在

まだ移籍市場が活発に動いているため流動的な部分はあるが、トッテナムにはすでに世界的なストライカーが2人在籍している。

言わずもがな、イングランド代表のハリー・ケインとブラジル代表のリシャルリソンの2人である。

ケインは1993年7月28日生まれの29歳。トッテナムでプロとなり、これまで3度のプレミアリーグ得点王に輝いた、世界的な点取り屋だ。

イングランド代表でも84試合で58ゴールを記録している。

リシャルリソンは、カタールワールドカップでセレソンの9番を背負ったストライカー。1997年5月10日生まれの26歳で、昨年夏にエヴァートンからトッテナムへ加入した。

ただし昨季は27試合に出場しながらゴールは1点のみ。総額6000万ポンド(およそ109億円)で獲得したFWの大ブレーキは成績不振の一つの要因となった。

このオフ、ともに移籍が噂されている両選手。ポステコグルー監督自身もチームを自分色に染めるため選手の入れ替えに積極的な指揮官だ。

また、FWに関しては活躍する選手のタイプを選ばない柔軟さがある。仮にどちらかが移籍した場合でも、古橋のように違うタイプのストライカーをチームに加える可能性は十分あるだろう。

ただ、57歳のポステコグルー監督にとって、今回のトッテナム監督就任はキャリアの集大成とも言える。ここで失敗すれば「その先」を見ることは間違いなく難しくなる。

そうしたなかで、自身が追及するアタッキングフットボールの“仕上げ”を担う大事なポジションに、プレミア未経験の古橋を果たして抜擢するだろうか?

セルティックで出場したCLでの停滞

セルティックは昨季、ポステコグルー監督のもとで世界最高峰の舞台UEFAチャンピオンズリーグに出場した。

グループステージではレアル・マドリー、RBライプツィヒ、シャフタール・ドネツクと同居し、結果は2分4敗。マドリーとライプツィヒに連敗し、シャフタールとの2試合はともに引き分けに終わった。

内容は基本的にどの試合も変わらない。セルティックが開始からアップテンポなサッカーで相手に襲い掛かるも、大事なところで精度を欠きなかなかゴールを奪えず。疲労により前半なかば以降から相手のペースとなり、後半はより難しい状況となる。

スコットランドで培った自慢の得点力は影を潜め、6試合でわずか4ゴールに終わっている。

古橋は途中出場した初戦のホームでのマドリー戦を除く5試合に先発。計361分に出場した。旗手怜央のシュートを押し込んでいればゴールとなった場面もあったが(結果は相手のオウンゴール)、決定的なチャンスを外してしまうことが多かった。

また、今月の日本代表ペルー戦のように得点機会以外の貢献度が低く、ゲームから消えがちであったことも事実としてある。その意味では同じFWでもヤクマキスのほうがチャンスがない中でもチームに貢献できることが多かった。

ヤクマキスと古橋がともに先発したホームのシャフタール戦では、ヤクマキスが先制点を決めた一方、古橋はそのヤクマキスのスルーパスから迎えた決定機を外してしまっている。

こうした試合を、当事者として目の前で見ていたのがポステコグルー監督だ。

トッテナムが戦うプレミアリーグには、セルティックにおけるスコットランド国内のような簡単なゲームは一つもない。プレミアで成功を収めるための補強として、古橋を選ぶ可能性はどれほどあるだろうか?

まとめ

厳しいことを書いてきたが、現在の欧州サッカーにおいて、プレミアリーグはやはり夢の舞台。そこに古橋が挑戦する姿を見たくないファンなどほとんどいないだろう。

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ポステコグルー監督の就任でトッテナムに目が行きがちだが、現在28歳の古橋の獲得を考えるプレミアクラブが出てくるのであれば、それは彼の実力が認めた証拠でもある。

代表戦が終わり、本格的に始まるマーケットで、「吉報」が届く日を静かに待ちたい。

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