「日本最古のおにぎり」が出土した中能登町で、築150年以上の古民家を改修したおにぎりの専門店が初めて誕生する。米や具材は地元産にこだわり、住民や観光客の憩いの場所とする。町が「おにぎりの聖地」として観光誘客に取り組む中、関係者は専門店の開業で町の魅力向上につなげたいと期待している。
●9月オープン
専門店は中能登町良川に9月にオープンする。町内で農家民宿「おり姫の宿くつろぎ」の女将(おかみ)島喜久子さん(72)が経営を担い、「たま姫茶屋」と名付けた。町の空き家バンクに登録されていた伝統的建築様式「アズマダチ」の家屋を購入し、母屋と隣接する離れを改修する。
たま姫茶屋のメニューは500円均一で、おにぎり2個とみそ汁がセットとなる。島さんが考案した薬膳みそや野沢菜のつくだ煮などの具材を予定しており、素朴な田舎の味を堪能できるようにする。
町内の杉谷チャノバタケ遺跡で1987年に「日本最古のおにぎり」が見つかったことにちなみ、町はおにぎりによる地域活性化を図ってきた。ただ、おにぎりを専門的に扱う店はこれまでなく、一部の住民から待ち望まれていた。
宮城県出身の島さんは2018年に中能登町に移住した。これまでもおにぎりの握り方講習会を開くなど、町おこしに協力してきた経緯があり、以前からおにぎり専門店の開業を目指してきた。
母屋は民宿「えにし屋」として開業し、24日に関係者向けの内見会が開かれる。入り口には県無形文化財の高級麻織物である能登上布で作ったのれんを掲げる。島さんは「観光客におにぎりの魅力を伝え、中能登町を好きになってもらいたい」と意気込んだ。