マンチェスター・シティの3連覇で幕を閉じた2022-23シーズンのプレミアリーグ。
そうしたなか、英紙『Guardian』は今季の“クラッチ”イレブンを選出していた。クラッチとはここぞの場面で力を発揮する勝負強さのような意味を持つ。
なお、よりおもしろいものにするために、1チームからの選出は1人だけに限定したとのこと(システムは3-4-1-2)。
GKエミリアーノ・マルティネス(アストン・ヴィラ)
現代のGKはシュートストップ以上のものを提供しなければいけない。とはいえ、ここぞの場面で失点を阻止することが重要な要素であることに変わりはない。
マルティネスは昨年のW杯決勝ではアルゼンチン代表の英雄だった。PK戦に持ち込むスーパーセーブを披露すると、そのPK戦でも2つのセーブを見せた。
W杯決勝でのPK阻止はまさにクラッチだが、彼はヴィラでも印象的だ。
プレミアリーグでのクロスキャッチ数は1位(60回)、スイーパークリア数でもニック・ポープに次ぐ2位。終盤のセットプレーや危険なカウンターに対処できる頼りがいのある選手であることを示している。
CB ジェームズ・タルコフスキ(エヴァートン)
エヴァートンは9カ月もの残留争いを勝ち抜き、タルコフスキはフルタイム出場を果たした。
プレッシャーのかかる状況下でこれほど多くプレーした選手は他にいないが、彼はそれだけに留まらない。
いくつかの驚異的な数字も叩き出している。200近いクリア数、インターセプションは51回、シュートブロックは78回を記録。ライバルのほぼ2倍もの数字を残しているのだ。
最終ラインの壁として配置されたため、ゴールはひとつだけ。だが、それは2月のアーセナルで決めたものであり、優勝争いと残留争いを一変させた重要なものだった。
CB:ガブリエウ・マガリャイス(アーセナル)
アーセナルはDFたちにビルドアップでの役割を果たすことを要求しつつ、カウンターに対しても常に警戒を怠らないというハイインテンシティな攻撃的ゲームプランでタイトル争いに殴り込みをかけた。
ガブリエウとウィリアン・サリバのCBコンビは難攻不落で、サリバが負傷するまでは誰もその壁を崩せなかった。
アーセナルでの3年目を迎えたガブリエウは、集中力と規律面の欠如を減らし、失点につながるミスをした8月にフラム戦でも決勝ゴールを決めてその償いをした。
相手ペナルティーエリア内では常に脅威となっており、チェルシーとのアウェーゲームでも決勝ゴールを決めている。
CB:イーサン・ピノック(ブレントフォード)
トーマス・フランク監督が率いるブレントフォードはハードに走り、終盤にゴールを奪い、ジャイキリを起こすプレミアリーグ屈指のクラッチ集団だ。
スタメンのほとんどがこのメンバーに名を連ねることができる。そのなかでも推しはピノックだ。
クリア数はリーグ1位、ブロック数とタックル数でも5位以内に入ったほか、3ゴールを決めてチームに勝点7をもたらしている。
2016年までは英7~8部の地域リーグでプレーしていたことを考えると、プレミアリーグで最も信頼できるDFのひとりとして台頭したことはより注目に値する。
本人は「選手たちは給料を多く貰っているわけではなく、家族のためにプレーしている。誰もが粘り強さとフィジカルを備えており、どの試合にも意味があった」と話しており、ノンリーグのインテンシティが自分をより良い選手にしてくれたと考えている。
右MF:マイケル・オーリス(クリスタル・パレス)
彼が1月のマンチェスター・ユナイテッド戦で決めた同点ゴール以上にクラッチさの真髄を示すものはないかもしれない。
1点を追う後半アディショナルタイムにフリーキックをトップコーナーに突き刺したのだ。
さらに、大喜びするどころかハーフラインまで歩いて戻って行った。
元チームメイトは彼にとってはゴールも仕事の一部に過ぎないと話しているが、これがシーズン2点目の得点だった。
彼が本当に優れているのはチャンスメイクであり、今季は11アシストを記録。パレスの総得点は40得点だったので、その三分の一に貢献していたことになる。
特に重要なのは残留争いをしていたライバルとの対戦で得点チャンスを生み出していたこと。5-1で勝利したリーズ戦ではアシストのハットトリックを記録している。
CM:イルカイ・ギュンドアン(マンチェスター・シティ)
ペップ・グアルディオラの3冠チームにはどこを見渡してもクラッチプレイヤーがいる。
だが、この巧妙なウイニングマシーンのなかでも突出しているのが、ギュンドアンだ。
同僚のカイル・ウォーカーは「彼は大事なシーズン終盤になると全盛期のジダンになる」とこのキャプテンについて話している。
ギュンドアンはリスクが高まると重要さを増すだけではない。FAカップ決勝でわずか13秒でとんでもないゴールを決めたように違うタイプの選手になるのだ。
リーグ戦ではタフな闘いになったエヴァートン戦でのパフォーマンス(2ゴール1アシスト)で優勝争いをしていたアーセナルのスピリットを打ち砕いた。
グアルディオラ監督がシティで最初に獲得した選手でもあるギュンドアンは移籍を決意しており、指揮官はビッグゲームで特別な才能を発揮する彼の代役を見つけるという難題に直面している。
DM:デクラン・ライス(ウェストハム)
欧州での栄光(UEFAカンファレンスリーグ優勝)と国内での凡庸(プレミア14位)があったウェストハムのシーズンで一貫性を示し続けた選手がひとりいる。
アーセナルへの1億ポンド(182億円)での移籍が報じられるなど、ライスは過大評価のレッテルを貼られることが多かった。
実際にはボール奪取などシンプルなことを非常にうまくやっている。昨季はリーグ断トツとなる63回のインターセプションを記録したほか、ポゼッションゲイン数でもトップだった(334回)。
14位に終わったチームでリーグ1位となるスタッツを記録したことは、重要な場面でチームを背負える重要なクラッチ力のある選手であることを示している。
攻守を切り替え、ボールを持ち上がり、チームトップとなる138回の攻撃参加も記録。ポゼッションゲインを重要視するアーセナルが彼をチームに欠けた要素と見るのは不思議ではない。
LM:三笘薫(ブライトン)
この日本人ウィンガーはブライトンの隠れた宝石の最新作であり、世界的な話題になったW杯でのカットバック(三笘の1ミリ)で名を上げた。
ボールがラインを割っていたかが大きな議論になり、その即興的なスキルの影は薄かった。
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ブライトンに戻った彼はロベルト・デゼルビ監督のインパクトプレイヤーとして台頭。プレミアリーグでの12試合で6ゴール4アシストと大暴れし、ブライトンを欧州の舞台へと導いた。
三笘はFAカップでも輝きを放ち、素晴らしい直感的なフィニッシュでリヴァプールを撃破し、個人のハイライトリールを増やした。
攻撃的MF:ブルーノ・フェルナンデス(マンチェスター・ユナイテッド)
長かった今シーズンで彼以上にプレーしたフィールドプレイヤーはいない。
これ自体が重要なことだ。なぜなら、どんなクラッチプレイヤーにとっても最初のハードルはピッチに立つことだからだ。
エリック・テンハフ監督は成功を収めたオールト・トラッフォードでの1年目にキャプテンである彼を重用した。
ブルーノにとっては最も爆発的なシーズンというわけではなかったが、それでも全コンペティションで14ゴール15アシストを記録。
確かながら地味なリーグ戦での数字(8ゴール8アシスト)はチームメイトたちのせいかもしれない。
ブルーノはスルーパス数、アシスト期待値、キーチャンスメイク数でリーグ1位だったのだ。1試合平均で3度の決定機を作り出しており、彼に必要なのは決定力のあるストライカーだけだ。
FW:カラム・ウィルソン(ニューカッスル)
ニューカッスル選手としては2003-04シーズンのアラン・シアラー以降で最多となるリーグ戦18ゴールを叩き出した。
彼以上に得点が多かったのは、アーリング・ハーランド、ハリー・ケイン、モハメド・サラー、イヴァン・トニーの4人。彼らはシーズン全般でゴールを決めたが、ウィルソンはニューカッスルがトップ4を確定させた終盤10試合で11ゴールの固め打ちを見せた。
30歳の彼はプレミアリーグ得点ランキング上位10人のなかで最もプレータイムが少ない選手でもある。90分平均の得点数は0.86であり、彼以上なのは楽勝にゴールできるハーランドだけだ。
途中出場から最も多くのゴール(4点)を決めたほか、PKも3本全てを成功させており、最も重要な場面で最も決定的な選手となった。
FW:タイウォ・アウォニイー(ノッティンガム・フォレスト)
プレミアリーグに残留するために能力以上の力を発揮したノッティンガム。寄せ集めのチームはキープレイヤーたちのパフォーマンスを頼りにした。
昨季は30人を補強したが、リーグ10ゴールを決めたアウォニイー以上のインパクトを放った選手はいない。
さらに重要なのは、10ゴール中9ゴールがチームに勝点をもたらしており、4ゴールは決勝点だったこと。
彼が股関節の怪我で離脱するとチームもスランプに陥ったが、最後の4試合で6ゴールと爆発。チームを一時は不可能と思われた残留に導いた。