韓国、容疑者公表拡大へ法整備 人権侵害の懸念も

韓国・釜山で起きた事件の控訴審判決後、取材に応じる被害女性=12日(聯合=共同、画像の一部が加工されています)

 【ソウル共同】犯罪容疑者の身元を原則として公表しない韓国で、凶悪事件での情報公開の拡大に向けた法整備が動き出している。加害者の再犯を恐れる世論への配慮が背景にあるが、専門家からは「犯罪の抑止効果には疑問があり、人権侵害に当たる」と懸念の声が上がる。

 きっかけは、昨年5月に南部釜山で起きた事件。男が面識のない20代女性に対し、背後から回し蹴りをして襲う様子を捉えた防犯カメラ映像が世間に衝撃を与えた。

 強姦未遂や殺人未遂の罪に問われたこの男が被害者への報復を示唆。情報開示を求める声が高まり、ユーチューバーが氏名などの個人情報を暴露して物議を醸した。捜査当局には殺人や強姦など特定の犯罪容疑者の身元を公開できる制度があるが、対象が限定されているため不十分だとの見方が強い。

 尹錫悦大統領は今月12日、女性を狙った凶悪事件の容疑者に関する情報開示の拡大を指示。与党「国民の力」の議員は20日、重大事件の容疑者を対象に最近撮影された顔写真を公表することを柱とした法案を提出した。

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