果汁たっぷり「種なしカボス」、大分県が開発 来春にも4市で試験栽培【大分県】

大分県が開発した種なしカボスの新品種「大分果研6号」
大分果研6号(中央)の断面図。種の少ない品種(左)よりもサイズが大きい。県内で大半を占めるのは種あり(右)

 大分県は特産品カボスの種がない新品種「大分果研(かけん)6号」を開発した。現在普及している大半は種がある。少ない品種も存在するものの、料亭や旅館の業務用を中心に「もっと搾りやすいタイプが欲しい」との声が強かった。実が付きやすく果汁も豊富で、高単価での販売が見込まれる。県は来春にも県内4市で試験栽培を始め、2028年度の実用化を目指している。

 県によると、大分果研6号は1玉当たりの種の数が「ほぼゼロ」。重さ100~120グラムで、主流の種ありとほぼ同じ。種の少ないタイプよりは大きくなる。実全体に果汁が占める割合は24%で、種ありよりも6ポイント高いデータが出ている。

 県内は自然交配でできたカボスが広く栽培されてきた。種ありの「大分1号」、種の少ない「香美(かみ)の川」などの計4種類がある。

 消費者からは「カボスは種が多くて使いにくい」といった要望があり、県は01年から独自品種の開発に着手した。

 さまざまな交配を試した結果、種が発生しにくい染色体の組み合わせを選抜することに成功した。18年に農林水産省へ品種登録を出願し、22年1月に認められた。

 県農林水産研究指導センターカボス・中晩柑チーム(津久見市)の山口竜一リーダー(59)は「先輩の時代から続く研究が実り、生産現場で使ってもらう希望が見えてきた」と話す。

 現在は苗木業者に委託し、福岡県久留米市内で約千本を育てている。来春にもカボス生産が盛んな臼杵、別府、国東、宇佐4市の複数の農家に振り分けて、生育状況や収量を調査する。

 JA全農おおいたが扱う県産カボスは、ジュース、調味料といった加工用の販売が9割近くを占める。新品種は単価の高い青果用の需要増が見込めるため、農家や流通団体からは期待の声が聞かれる。

 約100本の試験栽培に協力する県農協カボス部会の藤原輝幸部会長(58)=臼杵市乙見=は「種がない分、果汁が多く、ほど良い酸味の味わいも変わりない。特別なブランドとして売り込みたい」と力を込めた。

<メモ>

 植物が子孫を残す時は、染色体を半減する減数分裂が起きる。2組の染色体を持つ「2倍体」が多く、まれに変異で4組の「4倍体」が現れる。2倍体と4倍体を掛け合わせると「3倍体」が生まれる。減数分裂が進まず、種が作られにくくなる。大分果研6号も3倍体のカボスとして生まれた。

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