【部活どうなる(5)国の方針変更】新ガイドラインに安堵も「今までと何が違うのか」 課題山積のまま発進

部活動の地域移行のシンポジウムで発言するパネリストら=1月、埼玉県さいたま市浦和区の浦和コミュニティセンター

 昨年末、国が示した部活動の地域移行を巡るガイドラインは、移行期間に加え、受け皿となる実施主体や指導者について変更があった。

 当初、国は地域移行に向け、(1)市町村が外部の団体と連携して指導者を派遣する(2)総合型地域スポーツクラブや民間事業者が指導する―としていた。実施主体を自治体や教育委員会から切り離し、民間に委託。クラブチームや地域団体、企業が部活動の受け皿となるモデルを想定していた。

 自治体にとって、公的な教育活動の民営化は大きな転換。しかし予算措置や人員の確保、受け皿となる実施主体について、当てはなかった。

 新たなガイドラインでは、(1)(2)が困難な場合、「合同部活動の導入や部活動指導員等により機会を確保」すればよいとの内容が加わった。

 すでに多くの自治体が外部指導者を受け入れており、「移行」のハードルは下がった。ある自治体関係者は「移行が難しければ、(外部の)部活指導員を活用し顧問をサポートしてもよいということ。これで取り組みやすくなった」と明かす。一方、「今までと何が違うのか」との声もある。

 今年1月、埼玉県さいたま市浦和区で行われたシンポジウムでは、自治体職員や県スポーツ協会、学校長、研究者が移行について議論を交わした。

 県スポーツ協会専務理事の久保正美さんは国の姿勢について「修正は正しかったと思う」と評価した。久保さんは県内中学校には約5500の運動部があり、生徒約12万人が活動しているとし、「場所、人、資金が還流しないと持続可能な活動を行うことはできない。仕組みを確立することが大事」とする。

 シンポジウムでは丁寧な議論のないまま移行が目的になっていたことが指摘された。主催したNPO法人浦和スポーツクラブの小野崎研郎理事長は「何を目指すのか、何をしたいのか、一致しないといけない。それがないまま方法論を話しているからバラバラになる」と現況を分析した。

 少子化や教員の多忙から、地域へと移行が進められる部活動。受け皿となる実施主体、指導者や活動場所の確保、運営費の捻出、学校活動との連携など多くの課題を抱え、スタートを切った。=第1部おわり

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