ウォーレン・バフェット氏はなぜ日本の5大商社への投資を続けるのか

6月19日(月)、アメリカの投資家ウォーレン・バフェット氏が率いる投資会社バークシャー・ハザウェイは、日本の5大商社の持ち株比率を引き上げた事を明らかにしました。

5大商社とは三菱商事(8058)、三井物産(8031)、住友商事(8053)、伊藤忠商事(8001)、丸紅(8002)のことを指し、現在の持ち株比率は平均8.5%強(三菱商事6.59%→8.31%、三井物産6.62%→8.09%、住友商事6.57%→8.23%、伊藤忠6.21%→7.47%、丸紅6.75%→8.30%)で、合計の投資額はアメリカ国外の上場株式では最大規模です。


ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社へ投資する理由

遡ると2020年8月に5%超取得、2022年秋に6%台まで引き上げています。そして今年、2023年4月11日(火)には保有比率がそろって7.4%になり、その後約2ヵ月の間におよそ1.1%買い進めた事になります。また、長期保有が目的で出資比率を9.9%まで増やす可能性があるとしています。

バフェット氏は商社に着目した理由として、米投資・保険会社のバークシャー・ハサウェイと事業が似ていることをあげ、「将来、事業のパートナーとしての関係を築くことも不可能ではない」と語っています。

各総合商社は現在、輸出入を中心とした多角的なビジネスを展開。鉱業、エネルギーから自動車、食品、ヘルスケアなど、さまざまな業界を網羅しています。生産業者とメーカーや、小売店を繋ぐ役割をしている卸売会社です。

世界中のさまざまな場所に出向き、商品売買の交渉をします。よくラーメンからロケットまでと言われますが、扱う商品数は数え切れないほどです。また物流以外にも金融、情報、事業投資を行っています。

身近なところではファミリーマートは伊藤忠商事の子会社で、ローソンは三菱商事系列の会社です。セブン‐イレブンは三井物産と協力関係にあります。各コンビニエンスストアの後ろには商事会社が控えています。ケーブルテレビのJ:COMは住友商事グループに属しています。各商社とも売上が伸びるように事業投資を行い、経営に貢献しています。

5大商社の特徴

2023年3月期の決算から、5大商社の特徴などをお伝えします。

三菱商事の連結最終利益は、前の期比25.9%増益の1兆1,806億円でした。内訳をみると、天然ガス事業で1,706億円、金属資源事業で4,393億円、複合都市開発事業で1,233億円などの利益が大きくなっています。

三井物産の連結最終利益は、前の期比25.9%増益の1兆1,306億円でした。内訳をみると、金属資源事業4,388億円、エネルギー事業で3,094億円、機械・インフル事業で1719億円などの利益が大きくなっています。前期はエネルギー事業の貢献が目立ちました。

丸紅の連結最終利益は、前の期比28.0%増益の5,430億円でした。内訳をみると、金属事業で1,993億円、食料第二事業(穀物)で769億円などの利益が大きくなっています。

住友商事の連結最終利益は、前の期比21.9%増益の5,178億円でした。内訳をみると、金属事業で1,104億円、輸送機・建機事業事業で920億円などの利益が大きくなっています。

伊藤忠の連結最終利益は、前の期比2.4%減益の8005億円でした。伊藤忠のみ前期比でマイナスとなりました。内訳をみると、金属事業で2,469億円、エネルギー事業で1,143億円の利益をあげましたが、食料品事業で前年比463億円の減少が響きました。

なお、今期の決算予想はいずれも減益予想。先週末、6月23日(金)時点の各社配当利回りは三菱商事2.86%、三井物産2.71%、住友商事3.92%、伊藤忠2.83%、丸紅3.06%となっています。

株価は年初から丸紅が67%以上も上昇していて、続いて三菱商事63%、三井物産43%、住友商事39%、伊藤忠36%と軒並み上昇しています。この様に株価が急上昇している場面で、これ以上の株価上昇はなかなか厳しいかもしれません。

しかし、バフェット氏による商社株の一連の保有比率引き上げは、弱腰が続いていた日本株を見直すきっかけになり得たかもしれません。日本市場が、世界の投資家に良いイメージで注目され続けることを期待します。

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