青森レインボーパレード、10年目に 3人から始まった活動、今や200人超

青森市の中心街を練り歩く青森レインボーパレードの隊列。県外の団体からも参加者が駆けつけた=25日午後

 LGBTIQなど性的少数者が生きやすい社会の実現を訴え、青森市の中心街を練り歩く「青森レインボーパレード」が25日、10年目の節目を迎えた。2014年に3人で始まったパレードは、参加者200人超のイベントに拡大。「生きづらさがあっても、パレードの日は自分らしくいられる。だから、歩き続けることができた」。性的少数者への差別がなくなり、個人として尊重される社会を願い、主催団体のメンバーたちは仲間とともに声を上げ続けるつもりだ。

 10年目のパレードには212人が参加。虹色の旗やプラカードを掲げ、青森駅前公園から県庁周辺、新町通りを1時間ほどかけて巡った。沿道にはパレードを激励する市民の姿も見られた。

 参加者の一人(県内在住、30代)は「初めてパレードを歩いたけれど、自分を解放して盛り上がるみんなのパワーがすごく伝わってきた。権利を守るために声を上げる活動は大事だと思う」と語った。

 パレードはもともと、青森市出身の人権活動家でレズビアンを公表していた宇佐美翔子さん(故人)が中心となり始めた。そのパートナーの岡田実穂さん(38)が現在、実行委員会共同代表を務める。

 岡田さんは、パレードが始まった当時に比べて「性的少数者への理解は進んだ」と思っている。当時の県内には、性的少数者の存在そのものが認められていないような空気を感じていた。「この街では生きていけない」と離れていった仲間たちの姿も見てきた。

 生きるために必死で考えた活動の一つが、レインボーパレード。参加者や支援者は年々増え、今年は県を含む19自治体からのメッセージも届いた。

 「LGBTという言葉や、性的少数者が県内でも身近にいると、多くの人が分かってきた。その時点で、もう『理解』はできている」と岡田さんは話す。だからこそ、いま訴えたいのは理解の促進よりも「差別をなくすこと、個人として尊重されること」だ。

 性的少数者への認識や関心が高まるにつれて、反対派からの反発やヘイト行為もより見えやすくなった。岡田さんとともに実行委共同代表を務める松本ハルさんは「反対する人たちにも無視できないくらいに、私たちの声がちょっとずつでも届くようになってきたのかな」と受け止める。

 今回のパレードでは「まだ、黙らない」というテーマを掲げた。社会の変化は実感しつつも、性的少数者が安心して暮らせるための環境は「まだまだ不十分」と岡田さんは強調する。「マイノリティーの声は、言わなければ聞こえないものとされてしまう。だから、黙らない」

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