市民と専門家、白神山地を24時間調査 「バイオブリッツ」青森・鯵ケ沢町で開催

白神山地を代表するブナ林固有のチョウ「フジミドリシジミ」を指さす子どもたち=25日午前7時57分、鯵ケ沢町のくろもり館近く

 弘前大学農学生命科学部付属白神自然環境研究センターは24、25の両日、青森県鯵ケ沢町の白神の森遊山道入り口のくろもり館を拠点に、市民参加型の24時間生物多様性調査イベント「白神バイオブリッツ」を開いた。遠くは福岡県や奈良県を含む県内外の親子連れら56人が参加。専門家らスタッフ約50人とともに白神の自然の豊かさを実感した。

 「バイオブリッツ」は、市民が生物の専門家と一緒に、決められた地域の生物多様性を一定時間内に調査するイベント。国内ではなじみが薄いが、欧米を中心に20カ国以上で行われている。

 中村剛之センター長によると、国内での本格開催は北海道以外で初。白神山地が世界自然遺産登録30周年を迎える今年、白神の核心部と同じような森林景観が広がる地域で実施しようと同センターが企画した。

 24日は植物、キノコ、昆虫、脊椎動物のグループごとに分かれて調査。夜間は懐中電灯片手に散策する「ナイトハイク」で、動きが活発になった動物の様子に参加者が目を見張った。25日朝には、白神を代表するブナ林固有のチョウ「フジミドリシジミ」がくろもり館近くに姿を見せ、子どもたちが間近で観察した。

 両日の調査では、新種や県内初確認の可能性があるキノコやカメムシも発見。夜間に設置した自動撮影カメラには子ギツネやネズミも映っていた。

 弘前市の弘前大学付属小学校3年千石淳君(9)は「川のようなところでヤゴを捕まえた。知らない虫の種類を専門家がすぐ答えてくれた」。東京都から参加した小学6年の松永想大君(11)は「白神山地の近くだから、珍しいアリが身近にいて驚いた。いろいろな研究者と話せて勉強になる」と目を輝かせた。

 中村センター長は「市民が専門家と話しながら、その場で動植物を確認できる機会はなかなかない。ナイトハイクでは子どもたちが昼間と違う森の雰囲気を味わい、面白がってくれた」と開催の手応えを語った。

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