「京都に住みたい」首都圏の若者、移住計画に熱視線 相談者が増える理由は?

京都ファンミーティングで交流する参加者ら。移住に限らず京都の思い出などを語り合った(東京都渋谷区)

     京都への移住に関心を持つ首都圏の若者が増えている。新型コロナウイルスの影響で仕事の環境や価値観が変わったことが大きい。受け入れ自治体側も若者を呼び込む工夫を凝らしている。

 「京都が大好きで、自分の好きな町で働きたいと思った」。5月20日、東京都渋谷区のビルの一室で「京都ファンミーティング」と題したイベントが開かれた。埼玉県出身で京都市伏見区に単身で移住する中川貴史さん(32)が移住のきっかけや決め手、部屋探しの経験などを話した。

 イベントには首都圏の20代~60代の13人が参加。グループに分かれた自己紹介や京都に関するクイズもあり、楽しみながら交流した。

 参加した横浜市の会社員男性(24)は「テレワークができる会社なのでタイミングや縁があれば移住も考えている。家を選ぶ際の判断基準とかが理解できてよかった」と話した。

 主催したのは京都府の移住に関するサービスを提供する京都府移住センター。担当者は「いきなり移住の話はハードルが高い。京都に関心がある人たち同士でつながりも作ってもらえればいい。移住だけではなく、京都へのふるさと納税や2拠点生活のきっかけにもなれば」とする。

 京都府によると、東京窓口への40代以下の相談者数は2022年度は309人で、21年度より76人増えた。全年代でも22年度は474人で、21年度から113人増加した。

 多様な移住のニーズに対応するため、京都府は昨年度から移住を重点的に呼びかける対象を従来の農村地域に加え、人口が減っている市街地にまで拡大した。府地域政策室は「各都市や地域が望む人材を発信し、さまざまなライフスタイルを提案できれば人口の流入増加につながる」と期待する。

 全国の地方移住を支援するNPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都)によると、来訪者や問い合わせ件数は新型コロナの影響が大きかった20年を除いて増加傾向を示している。若い人の割合も増えており、同センターに新規で相談者登録をした人のうち22年は40代以下が70%を占めた。10年前の12年は50.9%だった。

 背景には新型コロナの影響でテレワークが進んだことや都会暮らしへの疑問、子育てをする上で自然環境を求める意識などがある。同センターが21年に実施した調査では、首都圏の地方移住希望者は推計で309万人いた。最近は住みたい地域が決まっていない状態での相談も増加しているという。

 同センターの高橋公理事長は自治体には住居や幅広い仕事の確保、移住者が地域になじむまでの支援が求められていると指摘。「京都は日本の中心だった場所で歴史の積み重ねがあり、日本海側も独特の文化がある。時間がゆっくり流れるような暮らしに魅力を感じる人たちはいるだろう」と話す。

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