【新NISA】成長投資枠の商品第1弾が発表、排除された投資信託の特徴は?

6月21日(水)に、新NISAの成長投資枠で取り扱い可能な投資信託が発表になりました。とはいえ、今回はあくまでも第1弾ということで、今後追加発表がされる予定です。

新NISAに備え、理解しておきたい成長投資枠の位置づけを解説します。


成長投資枠取り扱い投資信託にルールが設けられる理由

2024年1月から始まる新NISAは、現行の一般NISAを踏襲する「成長投資枠」と、現行のつみたてNISAを踏襲する「つみたて投資枠」のハイブリッドとなります。前者の投資可能金額は年間240万円、後者は年間120万円、合計360万円ともはや少額投資非課税制度と言えないほどの大きなお金が投資に向かえるようになります。

また生涯投資枠が1,800万円と設定されましたが、途中売却をするとその分、投資可能枠が再生します。つまり、一生涯繰り返し使える非課税の貯金箱が新NISAというわけです。

つみたて投資枠については、現行のつみたてNISAの対象商品がそのまま適用されますが、今回金融庁は「成長投資枠」について、改めて基準を設けることにしました。大きな金額が投資に向かうわけですから、これまでの一般NISAのように「なんでもOK」のスタンスではよくない、という判断なのでしょう。

日本には6,000本ほど投資信託があると言われていますが、今回金融庁はその中から以下の3つの排除基準で、成長投資枠の投資信託を線引きしていきます。

まず1つ目の排除基準は、運用期間が20年未満であることです。これはNISAが長期の資産運用の受け皿であることを考えると分かりやすいでしょう。2つ目の排除基準は毎月分配型、そして3つ目が高レバレッジ型です。特に高レバレッジでは、デリバティブ(金融派生商品)を組み入れる商品の扱いを厳しくします。

運用会社は、上記いずれかの基準に自社の商品が合致しないかどうかを確認して、届け出を出すことになっていますが、特に高レバレッジかどうかという点については、海外運用委託先に運用方法を確認しないといけないなどの理由があり、成長投資枠対象商品の発表は予定より遅れています。

今回の基準を元に投資信託が振り分けられると、成長投資枠で取引可能となる投資信託は6,000本あるうち、2,000本くらいまでに絞り込まれるだろうと言われています。運用会社からすると、新NISA市場の期待が大きいだけに、ここで販売できるかどうかは死活問題とも言えるので、今後さまざまな調整を経て、できるだけ多くの商品が成長投資枠に認められるように、と動きが活発になっているようです。

毎月分配型の黒歴史

今回の成長投資枠の排除基準にある「毎月分配型」は、つみたてNISAにおいても認められていません。分配そのものは利益のお裾分けともいえることなので、特に問題はないのですが、それでも本来長期の運用においては、利益は分配金として払い出さず、利益を再投資し利益が利益を生む仕組みにする「複利の効果」を狙うことがよいとされています。

利益を再投資して、運用効率を高めるという意味では、毎月分配型の投資信託を排除したのは納得感があります。しかし、あえて「毎月」分配型を排除したのには、そこに過去の黒歴史があることが一番の理由です。

毎月分配型の投資信託は、特に高齢者の方に多く販売された投資信託です。「年金のように分配金が入る」という触れ込みで、大変人気になりました。前述した通り、利益のお裾分けという意味での分配金は問題ないのですが、ここでは毎月分配することを先に約束していた点が問題の始まりでした。

投資において、「毎月安定的に決まった利益がでる」なんてことはあり得ません。しかし、毎月分配を出さなければいけない投資信託は、そのうちに「元本を取り崩して」分配に充てるようになりました。投資元本は投資家のお金ですから、それを取り崩すというのは、損失を出すことになります。

毎月分配型の投資信託は、タコが自分の足を食べるように、自分自身の元本を取り崩しているのですから、「何かおかしい」と思われても不思議ではないのですが、当時は元本を取り崩して分配金を出すことを「特別分配金」と呼んでいたのも、運用側から見たら都合のよいカモフラージュでした。

通常の利益の分配は、「普通分配金」と呼ばれます。利益を分配するのは、「普通」だからです。一方、投資元本を取り崩して分配金に充てるのは、普通ではありません。従って「特別分配金」と呼ぶ。なんとも不思議な理論ですが、主な投資家である高齢者の方たちにとっては、「特別」という言葉がもたらす心地よさに、本質的な問題点が長らく明らかになることなく運用が継続されました。

販売側にとっては、「分かりやすいセールスポイント」のある投資信託を、どんどん売りたいという気持ちがあるのでしょう。しかし、顧客本位の業務運営を考えると、毎月分配ありきの投資信託は長期の運用にはそぐわないと、新NISAでは100%排除となりました。

毎月分配型が排除されるのは、新NISAにおいても金融庁は投資家利益を守るために金融機関への監視を強めていくという意思表示のように思われます。

油断ができない「つみたてNISA」対象商品

成長投資枠の対象商品は、今後も随時追加され発表される予定です。また、その中から各金融機関がどんな商品を選択するのかも、今後適時発表されていくでしょう。販売の現場でどのような説明が行われ、投資家に提案されていくのか、非常に気になるところです。

基本的には成長投資枠で排除となっている3つの基準に加えて、低コストであることが求められる、つみたて投資枠の方が基準が厳しいので、投資家にとってはつみたて投資枠の対象商品の方が好ましいと考えます。

従って、成長投資枠でのみ対象となる商品は、つみたて投資枠では買えないような、魅力がある商品であることが望まれます。もちろん、個別株は成長投資枠のみ購入可能なので別ですが、投資信託においてはしっかりとした選別の目を養う必要があるでしょう。

また、現行のつみたてNISA対象商品であっても、最近はどんどん信託報酬の引き下げが実行されており、特にインデックスファンドにおいて、信託報酬の格差が拡大しています。つみたてNISAだからと言って、どれでも同じというワケにはいかなくなってきました。

例えば、TOPIXに連動するインデックスファンドの場合、最も低い信託報酬は0.14%ですが、最も高い信託報酬は0.55%です。それぞれの投資信託の一例ですが、前者に該当する投資信託にはニッセイTOPIXインデックスファンドが挙げられ、後者に該当する投資信託には、ニッセイTOPIXオープンがあります。名前が酷似しているため、間違って選んでしまうと、信託報酬が割高な分運用利回りが落ちてしまいます。

またMSCIコクサイに連動するインデックスファンドの、現時点で最も信託報酬が安いものは0.1%です。一方で最も信託報酬が高いものは0.66%です。前者に該当する投資信託には、eMAXIS Slim先進国株式インデックスがあり、後者に該当する投資信託にはeMAXIS 先進国インデックスがあります。こちらも、気をつけて見ないと違いが分からないくらい名前が酷似しています。

本来であれば、運用会社は同じ指数に連動するインデックスファンドを複数運用する必要はないと思うのですが、先に挙げたように、実際に同じ運用会社の同じ指数連動のインデックスファンドであっても、高い信託報酬のまま、つみたてNISA対象商品として放置されているものもあります。インデックスファンドにとっては、信託報酬の多寡は運用成績に直結するので、購入の際には気をつけたいところです。

投資の世界を広げてみる

非課税投資の普及が、少しずつですが確実に進んでいます。YouTubeチャンネルでの投資に関する発信が急激に増えた際は、筆者の元にご相談に来られる方はほとんど「S&P 500」に投資したいとおっしゃるものでした。

しかし最近は、インドのマーケットに興味があるとか、金や原油など商品に投資をする投資信託も購入してみたいと、ご自身の考えをおっしゃる方も増えてきました。また、独自の投資哲学に共感したと、アクティブファンドに関心を寄せる方も少なくありません。

投資に正解はありません。経験を積んで、ご自身なりの考えで長期の資産形成が実現できると、とても素敵だと思います。

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