化学メーカーカネカのグループ会社「カネカソーラー販売」(大阪市)は、伊藤忠商事(東京都)とともに、豊岡中核工業団地(豊岡市)内で必要な電力を賄う電力サービス事業を始める。立地企業の建屋に太陽光発電設備を設置。災害などで外部からの供給が止まっても、事業継続できる電力の自給自足体制を目指す。
両社で特別目的会社「豊岡地域エネルギーサービス合同会社」(同)を設立。今年3月、事業に協賛する8社の拠点に太陽光パネルを整備し、団地内に蓄電池設備を整えた。7月ごろに発電を始め、冬にも22社が製造拠点を構える同団地内への送電を始める。一般の電力供給が停止した場合でも、配電網が独立しているため、3日間程度の電力供給が可能という。
平常時は協賛8社に供給し、余剰分を工業団地内に販売する。二酸化炭素(CO2)排出量も年間1120トン削減できるという。カネカの広報担当者は「万一の際の備えになるだけでなく、再生可能エネルギーの地産地消にもなる」と事業の意義を強調する。
カネカは団地内でソーラーパネル工場を操業。豊岡市で大きな被害が出た2004年の台風23号の際、団地内も停電した経験もあって、事業地に選んだ。
一定のエリア内で自家発電し、電力量を蓄電池などでコントロールし、エネルギーの地産地消を図るシステムを「地域マイクログリッド」と呼ぶ。経済産業省は普及を目指し、システムを構築する事業者らを支援。豊岡の事業では、発電や蓄電設備の導入に同省の補助金を活用した。(石川 翠)
事業に協賛する8社は次の通り。
カネカ▽日本パワーファスニング(大阪府箕面市)▽東海バネ工業(大阪市)▽オフテクスホールディングス(神戸市中央区)▽ウィック(豊岡市)▽OESアクアフオーコ(同)▽豊岡紙器(同)▽神繊興業(同)