中小企業の「ゼロゼロ融資」返済が本格化 「1割強に不安」5千~6千社? 経営支援へ「早めの相談を」

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 新型コロナウイルス禍の中小企業対策として、国が実質無利子・無担保で貸し付けた「ゼロゼロ融資」の返済が本格化している。兵庫県内では1万5千社ほどが本年度に返済を始めるとみられる。物価上昇で収益環境が厳しい中、資金繰りがうまくいかずに倒産する企業も増えてきた。支援機関などは、経営状態に異変があれば早めに相談するよう呼びかけている。(高見雄樹)

 ゼロゼロ融資は最長で3年間、利子の返済が免除される。コロナ禍で経済活動が停滞した2020年の春から夏にかけて借り入れた事業者が多く、3年後の今年6~8月に返済開始が集中している。

 兵庫県地域経済課によると、県内では約4万4千社が民間金融機関を通じて融資を受けた。このうち3分の1程度が本年度に返済を開始する。残りは既に返済を始めており、一部は完済しているという。

 今後返済を始める企業の中には、物価高や価格転嫁の遅れなどから、収益環境が悪化した中小企業もある。そこで県は22年度から、同融資を受けた1万4千社を対象に、金融機関がきめ細かく経営状況をチェックする支援制度を始めた。より高度な支援が必要な場合は、公的機関の県中小企業活性化協議会(神戸市中央区)につないで再生や円滑な廃業に向けた具体策に入る。

 同協議会の野田勝也統括責任者は「ゼロゼロ融資先の1割強は返済に不安を抱える。早めに相談してもらえれば、影響は最小限に抑えられる」と話す。

 支援のフェーズ(段階)は三つある。最も初期で経営悪化レベルも低い「収益力改善」段階では、専門家と計画を作り、金融機関の支援も得て元の企業活動に戻ることを目指す。

 「再生」段階になると、金融機関から融資の返済猶予や債権放棄などの支援を受けつつ、破綻を回避して事業譲渡などにつなげる。最も深刻な「再チャレンジ」段階では、会社を円滑に廃業させ、社長の個人保証は外して再起を支援する。

 同協議会への相談件数や支援実績は東京、大阪と並んで全国トップ級。22年度から強化した「収益力改善」では約80社、「再チャレンジ」では約50社を支援した。

 野田さんは「県内の倒産件数が増加傾向にあるのが気がかり。経営者の早い決断で取引先の連鎖倒産を防ぎ、事業と雇用が守られて自身も再チャレンジできる。『良い倒産』があることを知ってほしい」と話している。

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