児童ポルノの被害者、小学生が4割 「グルーミング」横行、際立つ低年齢化 兵庫県警「被害は半永久的」

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 性的な画像や動画を撮影されたり、ネットに投稿されたりした18歳未満の児童ポルノ事件の被害者が低年齢化している。兵庫県警が1~3月に摘発した事件の被害者33人のうち、小学生が約4割を占め、中高生を上回った。若者をわいせつ目的で手なずける「グルーミング」が横行しており、県警はサイバーパトロールを強化している。

 県警などによると、1~3月に児童ポルノ禁止法違反で29件を摘発。昨年同期と比べて12件増えた。被害者も20人増の33人となり、年齢層別にみると、小学生=13人▽中学生=8人▽高校生=12人-だった。昨年は中学生が最多の8人で、高校生が3人、小学生と未就学児が各1人で、小学生の増加が際立っている。

 低年齢化の一因となっているのが「自画撮り」が流出したケース。脅される事例だけでなく、わいせつ目的を隠し、親身を装って関係性をつくった上で自発的に画像を送らせる「グルーミング」の手口にだまされる若者が後を絶たない。

 事件処理には至らないが、小学生が遊び半分で同級生に裸の自画撮り画像などを送り、気付いた保護者らから回収を依頼されるケースもあるという。

 ただ、データがいったんネット空間に出回ると、交流サイト(SNS)のフォロワー集めや営利目的で第三者に拡散される恐れがあり、捜査関係者は「被害が半永久的なものになりかねない」と警鐘を鳴らす。

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 「動画に映っているのが誰なのかは、もはや分からない」。県警幹部は、拡散された被害者を特定することの難しさを語った。

 県警は今年5月、動画共有アプリに投稿されたわいせつ動画の閲覧パスワードをツイッターで拡散した疑いで、20代の男を逮捕。動画の鑑定で体の発育程度から10代前半の男児を写したものだと分かったが、ネットに流通した動画の「横流し」のため、被写体の特定には至らなかったという。

 県警によると、男はこうした横流しの投稿を繰り返しており、ツイッターのフォロワーは延べ約3万人に上っていた。県警は男が運営する有料サイトへユーザーを誘導し、収益を上げる狙いがあったとみている。

 児童ポルノを巡っては、2014年の改正児童ポルノ禁止法の施行で単純所持も摘発対象になった。20年に国内最大級のアダルト動画販売サイトの運営者3人が逮捕された際、警察は児童ポルノ売買に関係する約2万人の会員名簿を押収。大量消費されている実態が浮き彫りになった。

 県警少年課は「ネット上には未成年になりすます大人もいる。子どもがいる家庭では、相手が誰かを問わず裸などの動画や画像を撮って送らないよう指導してほしい」と呼びかけている。

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 文教大の池辺正典教授(サイバーセキリュティー)の話 児童ポルノ被害を巡っては、SNSへの書き込みに端を発することが多く、援助交際目的のような分かりやすいものだけでなく、趣味などでの友達募集をきっかけに発展するケースが目立つ。保護者や周囲の大人が、「スマホネーティブ」の子どもたちよりも情報リテラシーで劣る点にも課題がある。何げない会話や生活の中で「その友達大丈夫?」と子どもに声をかけ、立ち止まらせることができるよう、大人が最新の知識を身に付け、アドバイスができるように努力しなければいけない。 (井上太郎)

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