「おむつの灰」が洗剤に!?高校生の研究が世界大会で金メダル!大手企業も研究依頼

元プロ野球巨人軍監督の故・藤田元司さんやタレントの眞鍋かをりさんらも学んだ、愛媛県立西条高校。こちらの科学部(化学分野)で、企業顔負けの研究が行われています。発想は「工場の煙」だとか…!?

■大手企業から高校生に研究依頼が!

西条高校は明治29年、1896年創立の伝統校。文部科学省のスーパーサイエンスハイスクールの指定も受けるこの学校の科学部(化学分野)では、現在、約30人が日々、研究を進めています。

中でも注目の研究テーマが「おむつの灰」です。

この灰は、地元・西条市と、おむつを製造した大手家庭用品メーカーの花王、それに京都大学がおととしから進めている実証実験で、使用済みの紙おむつを炭にした後の、いわば“残りかす”

実験は、水分を含んで嵩張(かさば)り、焼却炉の燃焼効率も下げるなど、ゴミである使用済み紙おむつが抱える課題を解決し、環境負荷も減らそうという試みです。

花王などが炭の活用を検討する一方、科学部には残ったおむつ灰の研究依頼が舞い込んだのです。「チームおむつ灰」結成です。

■おむつ灰が洗剤に!?発想は“工場の煙”

研究は、2021年度からスタート。当時の「チームおむつ灰」メンバーは、おむつ灰に含まれる「炭酸ナトリウム」という成分に着目し、洗剤として使用されている「セスキ炭酸ソーダ」の生成に挑みました。

発想のきっかけとは…?

西条高校科学部(化学分野) 大屋智和顧問
「当時の部員が、工場の煙の中に含まれるCO2に着想して生まれた研究なんです。煙を見て炭酸ナトリウムと二酸化炭素を反応させるという論文を見つけ、そこから『洗剤ができるんじゃないか』と思いついて、この研究が発展しました」

まず「炭酸ナトリウム」そのものから「セスキ炭酸ソーダ」の生成に取り組んだ結果、見事成功。翌2022年度も継続し、生成率は、当初の1割程度から95%にまで大幅にアップしました。

「チームおむつ灰」のこうした研究成果は2022年10月、高校化学グランドコンテストで上位2チームに入り、2023年2月に台湾で開催された世界大会の出場権を獲得。

入賞はならなかったものの、大会に訪れていたチュニジア政府の教育関係者の目に留まり、翌3月、現地の世界大会に招待されると、準グランプリにあたる金メダルに輝きました。

元チームおむつ灰 新本友季さん(3年)
「いつも頑張ってきた研究が世界的にも評価されたことは大きな達成感につながりました」
元チームおむつ灰 横井良音さん(3年)
「世界大会ということで、いろいろ準備が大変だったんですが、楽しんでできた上に結果にもつながったのでとてもうれしかったです」

■「チームおむつ灰」メンバーのその後は…

チュニジア世界大会での金メダル以外にも、たくさんの表彰を受けたこの研究。「チームおむつ灰」の勢いはこれだけにとどまらず…。

西条高校科学部(化学分野) 大屋智和顧問
「研究に参加したメンバー2人ともが第一志望、大阪大学と北海道大学に合格しました」

自らの進路も射止めた先輩たちから研究を引き継いだメンバーたち。2023年度はいよいよ、おむつ灰から炭酸ナトリウムを取り出し、セスキ炭酸ソーダを生成することを目指しています。

チームおむつ灰 植田紗世さん(2年)
「今はおむつ灰からセスキ炭酸ソーダの回収率は30%と低いので、先輩たちが炭酸ナトリウムで出した95%に近づけられるようやっていきたいです」

■「チームおむつ灰」が地球も救う?

ところでこのセスキ炭酸ソーダ。現在、市販されているものは、海外で採掘された「トロナ鉱石」が原料、つまり天然資源なんです。

一方、炭酸ナトリウムから生成する場合、二酸化炭素を吸収させるため、この取り組みが軌道に乗れば、地球の資源保護や温暖化防止にも貢献しそうです。

チームおむつ灰 植田紗世さん(2年)
「ナトリウム系の化合物だったら何でもCO2と反応させて再資源化できるので、いろいろな物の再資源化に取り組んでいきたいなと考えています」

愛媛有数の工業都市・西条市の伝統校で行われている企業顔負けの研究が、地球の環境を救うかもしれません。

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