「やることやった」結果待つ遺族・奥さん 那須雪崩事故、きょう民事判決

民事裁判の記録などを書き記したノートを手にする奥さん。手前の写真は息子の公輝さん=25日午後、さくら市氏家

 栃木県那須町で2017年3月、大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した那須雪崩事故の民事訴訟の判決が28日、宇都宮地裁で言い渡される。「やれることはやった」。遺族代表の奥勝(おくまさる)さん(51)はそう語る。事故で長男公輝(まさき)さん=当時(16)=を失った。雪崩のメカニズムや事故事例を独学し、事故当時の生徒らの行動を再現した自作映像が法廷で再生された。部活動中の事故で、引率教諭らに重い過失があると訴え続けてきた遺族側。「人災であることを認めてもらって公輝に報告したい」と話した。

 登山講習会の責任者だった教諭ら3人が、事故の責任をどう考えているのか。奥さんら遺族はそうした思いを抱え続けてきた。

 事故の責任を認めて謝罪するよう求め、20年3月に民事調停を申し立てた。しかし8回の協議に3人が出席することはなかった。責任を明確にするために起こした民事訴訟だった。

 事故原因を解明したいとの一心で、雪崩のメカニズムや事故事例集、部活動の在り方に関する本を読みあさった。裁判官に事故状況をより理解してもらうため、生徒らの行動をCGで再現した映像も自作。法廷の大型モニターに映し出された。民事調停からやりとりを書き始めた専用ノートは6冊目になった。

 遺族の先頭で原因解明や再発防止を訴え続けてきた。一方で、活動が思うように進まず、徒労感や絶望感にさいなまれることも。「自分は何をしているのか」「事故が世間から忘れられるのでは」。1人涙を流す時もあった。

 「不運な自然災害では終わらせない」。事故の責任の追及と風化を防ぐため、遺族同士で支え合い、ホームページでの情報発信などを続けてきた。

 教諭ら3人の刑事責任を巡っては、業務上過失致死傷罪での刑事裁判が同時並行で進んでいる。そんな中、民事訴訟の判決を一つの区切りともとらえている。

 「(教諭ら3人に)責任逃れができないことを示してほしい」。そう裁判所に求める。「この先、同様の事故が起きたら私は耐えられない」との思いを抱える奥さん。判決が今後の部活動の在り方に一石を投じることを祈っている。

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