市村記念体育館「近代運動建築」に 国際学術組織「ドコモモ」選定 佐賀県内3例目

「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれた市村記念体育館=佐賀市

 佐賀市の佐賀県立市村記念体育館が、「日本におけるモダン・ムーブメント(近代運動)の建築」に選ばれた。近現代建築の記録と保存を推進する国際的な学術組織「DOCOMOMO(ドコモモ)」日本支部が建物の持つ歴史的な価値を評価した。県内での選出は、県立図書館、県立博物館に続き3例目となる。

 同体育館は、リコー三愛グループを創業した市村清氏(三養基郡みやき町出身)が1963年に私財を投じて建設、県に寄贈した。選定した同支部は、国立西洋美術館の設計で知られるル・コルビュジエの弟子でモダニズム建築の巨匠として知られる建築家、坂倉準三(1901~69年)が手がけた正面から王冠、側面からくらのように見える外観、木製の階段手すりなど独創的なデザイン性を評価する。

 バレーW杯、国体の体操競技だけでなく、デビュー直後のサザンオールスターズのコンサートにも使われた。県は2017年から体育施設としての利用を停止し、18年には肥前さが幕末維新博覧会の会場に使用した。今後は、つり天井の屋根を付け替えるなど大規模改修し、25年度に文化体験・創造の拠点としてリニューアルする。

 モダニズム建築は老朽化で使いづらくなり、耐震性などから文化財として保全される前に解体されるケースがみられる。同支部は県の取り組みに「保存か解体かの岐路に立っている全国のモダニズム建築の在り方に一石を投じる試み」と述べた。県文化課は「現行のデザインを生かしながら別の形で利活用していく。県民に愛されてきた歴史ある建物、文化的な価値を大切にしたい」としている。(大田浩司)

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