刺症被害、過去最多ペースに タカサゴキララマダニ、栃木県内で18件

タカサゴキララマダニの若虫(島田医師提供)

 深刻なウイルス感染症を引き起こす恐れもある大型のダニ「タカサゴキララマダニ」に関して、足利赤十字病院が今年確認した刺症の被害は27日時点で18件に上り、過去最多のペースとなっていることが、内科非常勤の島田瑞穂(しまだみずほ)医師らの研究で分かった。県内に同マダニはほとんど生息していないとされてきたが、足利や佐野市の里山に定着しているとみられる。マダニが媒介する感染症で死亡する例もあり、島田医師は注意を呼びかけている。

 タカサゴキララマダニは成虫の体長が5~6ミリで、主に野生動物に寄生する。県衛生研究所などの過去の調査では、県内ではほとんど確認されなかったが、同病院は2015年に刺症の被害を4件確認。以降、増加傾向となり17年は最多21件に上った。

 被害は3~10月に発生し、5、6月が最も多い。今年はすでに昨年1年間の12件を超え、17年のペースも上回っている。

 20~22年の3年間のマダニ刺症49件(2~86歳)のうち、足利市の刺症は38件。いずれも渡良瀬川左岸の「河北」地域に集中し、23件は自宅の庭や畑などで被害に遭った。市外の受診は佐野市や群馬県の近隣各市だった。

 島田医師らは21年、県猟友会足利中央支部の協力を得て、足利市内のイノシシやシカに付着するマダニの調査を実施。タカサゴキララマダニがイノシシに付着し、住宅地に運ばれている実態が分かった。20~22年の調査をまとめた論文は、今月発行予定の学会誌「衛生動物」に掲載される。

 同マダニに刺されても痛みやかゆみなどの症状はなく、気付かない場合もある。しかし、特効薬がなく、致死率が25~30%とされる感染症「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス」を保有しているケースもあるという。

 県内のSFTS報告例はないものの近県では確認されており、島田医師は「いつ県内で感染してもおかしくない。入浴時に体を触って異物が付着していないか確認をしてほしい」と訴える。マダニを無理にはがすと口の部分が肌の中に残る可能性もあり、除去が難しい場合は病院での処置を勧めている。

タカサゴキララマダニの刺症件数

© 株式会社下野新聞社