【韓国】竜仁の半導体拠点、26年着工[IT] 官民共同でサムスン受託生産強化

サムスン電子と韓国国交省、京畿道、竜仁市、LHの5者は27日、サムスン電子・器興キャンパス(京畿道器興市)で竜仁半導体クラスターの成功裏の造成に向けた業務提携式を開いた=韓国(京畿道提供)

韓国半導体大手サムスン電子の国内4カ所目となる半導体製造の拠点「竜仁半導体クラスター」(京畿道竜仁市)が、2026年にも着工する見通しだ。当初予定より約3年前倒しする。完成すれば、世界最大級のファウンドリー(半導体の受託生産)拠点となる。この分野で先を行く台湾の台湾積体電路製造(TSMC)との差を官民一体で縮めたい考えだ。

サムスン電子と韓国国土交通省、京畿道、竜仁市、韓国都市住宅公社(LH)の5者は27日、竜仁半導体クラスターを成功裏に推進するための業務提携を締結した。

竜仁半導体クラスターは、竜仁市処仁区南四邑の710万平方メートルの敷地に造成される。42年の完成をめどに、ファウンドリーを中心とする半導体製造工場5棟が建設される予定で、総事業費は約300兆ウォン(約33兆円)を見込む。

サムスン電子は今年3月に大まかな事業計画を発表していた。当時は29年ごろに最初の工場の建設に着手するとしていたが、今回の提携では通常1年ほどかかる予備妥当性審査などの事前作業を短縮し、26年末の着工を目指すことで合意した。

これに向けて韓国国交省は、クラスターの敷地確保のために農業用の土地を産業用に切り替える手続きや、開発が制限されているグリーンベルトの解除といった準備に迅速に取りかかる方針という。

サムスン電子や政府は事業を効率的に進めることで、早ければ30年に一部の工場を稼働させたい考えだ。

■用水・電力供給でもスクラム

工場5棟が入居する半導体クラスターの稼働には、電力や用水などの大規模なインフラ設備が必要になる。

サムスン電子は、最初の工場稼働を見込む30年末に0.4ギガワット、工場5棟の生産ライン全てが稼働した場合には7ギガワット以上の電力が必要と見込んでいる。また、用水は30年末に3万トン、全ての工場稼働時に65万トンが必要になるという。

韓国政府と京畿道、竜仁市はこのための政策支援も惜しまないと約束した。産業通商資源省と環境省が協力して電力・用水の供給方法を協議するとともに、京畿道と竜仁市は周辺の地方自治体との協力も模索していく。

ただ、韓国経済新聞によると、7ギガワット以上の電力は原子力発電施設5基に相当する。サムスン電子は京畿道平沢市の半導体工場建設時に送電網を巡って地域住民と対立し、建設工事が遅れた経験を持つ。竜仁半導体クラスターの造成で同じ轍(てつ)を踏まないためには、地域社会との事前協議も行っていく必要がありそうだ。

■国際的な競争力維持に総力

半導体は近年、米国と中国の対立で見られるように安全保障の一部として重要性が高まっている。そのため、米国だけでなく欧州連合(EU)、日本が自国の半導体産業育成を加速させている。

韓国にとって最も主要な産業である半導体の競争力向上は避けて通れない道だ。特に、サムスン電子が最大手のメモリー分野とは異なり、ファウンドリー分野はTSMCとの差が広がりつつある。加えて、キオクシアやウエスタンデジタルなど日米企業の追い上げも激しい。

韓国国交省は「半導体はタイミングが重要な産業であるだけに、先制的な投資を通じて競争力を維持していく必要がある」と、竜仁半導体クラスターの重要性を強調した。

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