ドラッグストア業界の株価はどうなるのか−−先陣切ったツルハHDの決算から占う

かつて、インバウンドの主役はドラッグストアでした。わたしが仕事で通う原宿の竹下通りには、20mおきくらいにドラッグストアが点在し、どこも外国人客で溢れかえっていました。

前回、#シン・インバウンドとしてOTC医薬品を製造販売する企業への期待をお話ししましたが、それらを販売するドラッグストアも、ふたたび脚光を浴びるのでしょうか?


ドラッグストアの陣取り合戦

今やドラッグストアといえば、薬・化粧品だけでなく食品、日用品など扱う商品は多岐にわたり、スーパーやコンビニにとって強力なライバルとなりつつあります。事実、スーパーとコンビニの国内店舗数は頭打ちとなっていますが、ドラッグストアの総店舗数は拡大基調にあります。また、買収や統合も多く、激しい陣取り合戦が繰り広げられています。

現在の時価総額ベスト5を見てみましょう。

【1位】マツキヨココカラ&カンパニー:11,570億円
【2位】ウエルシアHD:6,244億円
【3位】コスモス薬品:5,750億円
【4位】ツルハHD:5,391億円
【5位】サンドラッグ:5,078億円

2021年にマツモトキヨシHDとココカラファインが統合したことで、マツキヨココカラ&カンパニーがひとつ頭を抜きんでていますが、売上高でみれば1兆円企業のウエルシアがトップです。また、ドラッグストアと一括りにされますが、かなり商品構成に違いがあります。

たとえば1位のマツキヨココカラは、医薬品と化粧品で売上の70%近くを占めますが、2位のウエルシアHDは35%程度です。当然、医薬品や化粧品のほうが収益性が高いため、営業利益率はマツキヨココカラが6.55%(2023年3月期)、ウエルシアは3.99%(2023年2月期)と差があります。

2023年に入ってからの両者の株価推移を比べると、マツキヨココカラはきれいな右肩上がり、一方のウエルシアHDはまったく冴えず、年初来ではマイナスになっています。

画像:TradingViewより

株価の開きの理由を検証するため、各社の新年度予想を見てみましょう。

マツキヨココカラ&カンパニーの2024年3月期予想は、①売上高980,000(百万円)、②前年比+3%、③営業利益64,500(百万円)、④前年比+3.6%と、微増収、微増益です。

画像:マツキヨココカラ&カンパニー「2023年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

一方、ウエルシアHDの2024年2月期予想は、①売上高1,230,000(百万円)、②前年比+7.5%、③営業利益48,000(百万円)、④前年比+5.2%。マツキヨココカラと比べると、増収率、増益率ともに大きく、ウエルシアのほうがよさそうに見えます。

画像:ウエルシアホールディングス「2023年2月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

それなのに株式市場は、マツキヨココカラのほうを評価している理由はいったいなんでしょう?

ちなみに、どちらも新年度は過去最高売上、最高利益を更新する予想です。ただし、残念なことにウエルシアは、売上高営業利益率が、3.99%から3.9%へ低下。一方のマツキヨココカラは、6.55%から6.58%へと改善され、これは過去25年を通して最高の数字です。

輸送費や人件費など費用が嵩むなかで、出店の基準を厳格にしたり、収益性の高いPBや化粧品、医薬品の販売を強化したりといった企業努力の姿勢が、株価にも反映されているのではないかと考えられます、

形態が近いツルハHDの決算がヒントに

今後、ウエルシアHDが、マツキヨココカラの株価上昇に追いつくことができるのでしょうか?

おそらく次回の決算発表の結果によると思いますが、次回の決算発表日はマツキヨココカラが8月半ば、ウエルシアは7月10日(月)です。ウエルシアの営業利益率に改善が見られれば、低迷している株価に上昇のキッカケを与える可能性があります。

そこでヒントになるのは、ウエルシアと形態が近いツルハHDの決算です。両者ともドラッグストアの中では総合型と呼ばれ医薬品、化粧品、食品、調剤など偏りなく扱っています。

6月23日(金)に発表された、2023年5月期のツルハHDの決算を確認しましょう。

画像:ツルハホールディングス「22023年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

①売上高970,079(百万円)、②前年比+5.9%、③営業利益 45,572(百万円)、④前年比+12.3%。売上高は予想値とほぼ同じですが、営業利益は予想値42,700(百万円)と比べると、6.7%上振れて着地しています。

直近3ヶ月の3-5月だけを見ると、営業利益は7,853(百万円)で、前年の3-5月期6,518(百万円)と比べると20.5%増益とかなり好調でした。また営業利益利率も、前年は2.9%に対し、直近の3-5月は3.3%と改善されています。

新年度である2024年5月期の予想は、⑤売上高1,033,000(百万円)、⑥前年比+6.5%、⑦営業利益 47,200(百万円)、⑧前年比+3.6%と少し物足りない感じがするものの、市場のコンセンサスよりも良い数字となっています。売上高が1兆円の大台に乗って、過去最高を更新する予想はインパクトがあります。

画像:ツルハホールディングス「22023年5月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」より引用

また同時に前期比7円増配の267円を計画しており、株主還元の姿勢も打ち出しました。これが好感され、決算発表翌日の株価は2.7%上昇。ツルハHDの株価は、年初から9%近く上昇しており、マツキヨココカラには及びませんが、上昇基調ではあります。

低迷しているウエルシアが、次回の第一四半期決算でツルハHD同様に、市場のコンセンサスを超える数字を叩き出せれば、冴えない株価が一転するかもしれません。

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