「現代の北前船構想」元祖にヒント 元JR九州社長、京都のふるさと訪問

台湾鉄道建設に尽力した澤井市造の石像を見学し、思いをはせる石井さん(宮津市由良)

 京都府宮津市とゆかりのあるJR九州初代社長の石井幸孝さん(90)が、同市由良を訪問した。明治期に栄えた北前船に関する資料館や、地元出身の実業家で台湾での鉄道建設にも尽力した澤井市造(1850~1912年)の墓を訪ね、先人の足跡への思いを深めた。

 石井さんは旧国鉄出身で、1987年の分割民営化で発足したJR九州で初代社長を務めた。宮津市に母方の実家があり、本籍も同市に置く。退職後も鉄道に関する著作の執筆、講演を行うなど精力的に活動している。

 著作で、新幹線による貨物輸送の必要性を説いている石井さん。とりわけ、北陸新幹線や自治体が誘致を進める山陰新幹線など、日本海側を軸にした輸送網を形成する「現代の北前船構想」を提唱している。今回、元祖となる北前船の歴史などに触れ、執筆に役立てようと訪れた。

 石井さんは6月中旬、「由良の歴史をさぐる会」のメンバーと北前船の資料や模型を展示している由良郷土資料館(由良神社境内)を見学。当時、400軒だった由良に船頭が40人以上いて船の所有者が多かったことに触れ、「ここ一帯が物流センターだったのですね」と感想を述べた。

 由良の海岸にある澤井市造の石像と近くの墓も参拝。「澤井さんの台湾での活躍が現在の日本と台湾の友好関係につながっている」と同じ業界に身を置いた先人に思いをはせ、「由良の人たちの、文化と歴史を育む気質が素晴らしい」と振り返った。

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