栃木県内民泊、コロナ禍前の2倍に 那須で一棟貸し型急増 新法施行から5年

県内の民泊の推移

 民泊を解禁した住宅宿泊事業法の施行から6月で5年。同法に基づく県内の届け出住宅数は5月末時点で319件で、新型コロナウイルス感染拡大前に比べ約2倍に増えたことが、29日までに分かった。家主不在で自由に使える別荘を活用した民泊が増えたのが要因とみられ、全体の半数が別荘地を抱える那須町に集中。コロナ禍の水際対策が終了し、回復傾向にあるインバウンド(訪日客)を見込む動きも出ている。

 県によると、市町別の届け出住宅数は5月末現在、那須が155件で全体の48.6%を占め、日光が47件、真岡が33件、佐野、那須塩原が各20件などと続く。

 全国の届け出住宅数(5月15日時点)はコロナ前の2019年12月に比べ4.9%下回ったのに対し、本県は同じ12月の165件から約2倍に増加。別荘を活用した民泊の増加が目立つ。

 全国で民泊事業を展開する「matsuri technologies(マツリテクノロジーズ)」(東京都新宿区)は、那須地域で空き別荘などを一棟貸し出すスタイルで民泊15件を運営する。稼働率はコロナ禍でも平均で年120日程度だった。同社の担当者は「首都圏から車で移動できるため、コロナ禍でも予約は堅調だった」と話す。

 一方、家主が住宅の一室を貸し出す「家主同居型」の民泊は感染拡大のあおりを受け、予約受け付けを長期休止したケースもあった。

 観光庁によると、コロナ禍が本格化した20年度の県内民泊の延べ宿泊者数は1万8097人。19年度から4割下回ったが、21年度には3万6千人台まで回復した。22年12月~23年1月で見ると、宿泊者数のうち外国人は約1割にとどまるが、水際対策が終了し、利用拡大を図る動きもある。

 益子町唯一の民泊「ホステルましこ」は昨年11月、そばなどを振る舞うレストランの2階にオープンした。オーナー高久博(たかくひろし)さん(52)は、そば打ちなど日本ならではの体験メニューを用意し「国内外の観光客を呼び込み、地域活性化につなげたい」と期待する。

 国土交通省は訪日客回復を見込み今夏にも民泊の参入要件を緩和する方針だ。一方で民泊は家主、宿泊者双方にとって手軽なだけに騒音などのトラブル対策が課題となる。宇都宮大地域デザイン科学部の鈴木富之(すずきとみゆき)講師(観光地理学)は「近所トラブルや犯罪利用を防ぐ適切な管理が必要になる。本県を訪れる外国人は日帰りが多く、宿泊客増にはサービス充実が鍵となるだろう」と指摘している。

 ■民泊 一般住宅を旅行者に有料で提供する宿泊形態。2018年6月施行の住宅宿泊事業法で、都道府県などへの届け出を条件に年180日まで営業可能となった。当時急増していた訪日客の受け入れ、東京五輪・パラリンピック時の宿泊施設不足の解消などの狙いがあった。空き家やアパートなどを活用した民泊もある。

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