児童虐待の相談、兵庫県が県警と全件共有へ 神戸6歳男児死亡受け、斎藤知事「小さなシグナルを共有」

亡くなった男児が住んでいた自宅を調べる捜査員ら=23日午前10時43分、神戸市西区玉津町居住

 神戸市西区の草むらで穂坂修ちゃん(6)の遺体が見つかった事件を受け、兵庫県の斎藤元彦知事は29日、県所管のこども家庭センター(児童相談所)が把握した児童虐待を疑わせる相談について、全件の内容を県警と共有する方針を明らかにした。これまではリスクの高い事案を共有していたが、重大な事態に発展するのを防ぐため、軽度な相談も共有する。7月中にも体制を整えるとした。

 県の児相は7カ所あり、神戸市と明石市を除く39市町を所管する。児相に寄せられた虐待が疑われる相談は、1カ月ごとにまとめて県警に報告する。だが「子どもの泣き声がする」などの内容であれば、同じ内容の相談が2回以上あった場合のみ共有の対象だった。今後は軽度で、1回だけの相談であっても共有する。

 県児童課によると、2022年度に県が県警と共有した相談件数は約500件。軽度かつ1回だけの相談を含めると、見直しによって年間5700件程度に上るとみられる。

 斎藤知事は29日の定例会見で「たいへん痛ましい事件。児童虐待を未然に防ぐには、小さなシグナルを関係者が共有することが大事だ」と強調した。

 一方、独自の児相を持つ明石市と神戸市は、虐待相談の全件を既に月ごとにまとめて県警に報告している。しかし神戸市西区で修ちゃんが死亡した事件では、母親から相談を受けた西区役所が、児相と一時保護を協議したものの、事案自体は児相に送致されておらず、県警に伝わっていなかった。

 斎藤知事はまた、各市町が設置する「要保護児童対策地域協議会」でも、関係者の連携も進めるとした。実務者会議に警察官が出席しない約10市町は出席する方向で市町や県警に働きかけるという。(金 慶順、井沢泰斗)

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