「強引で拙速」住民反発 市の説明不足、不信根強く...栃木・部屋小移転問題

6月上旬に住民の要望を受けて追加で開かれた全自治会対象の説明会。市の方針が浸透せず、職員は対応に追われた

 栃木県栃木市の部屋小移転問題を巡る混乱が続いている。同校を旧藤岡第二中へ移転させる市の方針に対し、一部住民が「プロセスが強引で拙速」と撤回を求めて強く反発。市側は地元の関係者による検討会議を設置し、会議の結論を尊重することを表明したが、反発した住民は「白紙撤回が前提」との姿勢を崩していない。市の「説明不足」による不信は根強く、地区で今後の在り方がどのように議論されるのかは不透明となっている。

 「一度白紙撤回してもらわないと納得いかない」。23日の市教育委員会定例会で、毛塚寛人(けづかひろと)さん(52)が語気を強めた。部屋小の保護者の1人で、移転撤回を求める請願を提出した住民代表を務める。

 念頭にあったのは、市側が設置を提案した検討会議のことだ。地域やPTA、毛塚さんらが委員として想定されている。「会議でも『移転ありきで誘導されるのでは』という不安がある。それだけ市のやり方は不信を招いたんです」。終了後、毛塚さんが説明した。

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 端緒となったのは、昨春の藤岡第二中の閉校だった。市は利活用方法の検討を始め、昨年4月に部屋地区の28自治会にアンケートで意見を募ると、9自治会が「部屋小移転」と答えた。

 同校の老朽化や関東・東北豪雨での浸水被害も踏まえて市は同年11月、内部で移転方針を決定。年明けに地域で説明を始めた。

 だがコロナ下で実施された自治会アンケートに回答したのは一部の役員のみとみられ、住民には広く伝わっていなかった。2月の保護者への説明会もオンライン開催で、意見交換は実施しなかった。

 市の「方針案」を「決定事項」と受け止め反発した住民は少なくなかった。疑念を抱いた毛塚さんらは白紙撤回を求めて署名運動を開始。約2600人の地区で、地区外も含めて900人以上が署名した。市側は追加で説明会を設定するなど対応に追われた。

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 「正直思っていたより反対が多かった」「アンケートの取り方やタイミング、説明の仕方がやや不十分だった」。増山昌章(ましやままさあき)副市長や青木千津子(あおきちづこ)教育長が6月市議会一般質問で認めた。

 ある市議は「過去の浸水被害を考えれば、移転の提案自体は理解できる。だが学校がどうなるかは地域の敏感な問題。より丁寧に住民の声を聞いて進めるべきだった。詰めが甘い」と指摘した。

 当面は検討会議の在り方が焦点だ。毛塚さんは参加に慎重だが「学校の安全や地区の今後と向き合ういい機会でもある。その上での結論なら移転にも反対しない」とも話す。

 ある市幹部は「検討会議も移転も無理して進めることはない」と強調する。掛け違えたボタンを直せるのか注目される。

市が旧藤岡第二中へ移転する方針の部屋小

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