「滝のように降る雨」って? 国内 “最強レベル”の猛烈な雨を体験 世界最大級の降雨再現施設 気象予報士レポート

本州では梅雨の最盛期を迎え、各地で非常に激しい雨や猛烈な雨を観測しています。西日本各地では例年より早く5月にシーズン入りした2023年の梅雨…。梅雨入り早々、日本付近に停滞する梅雨前線と南の海上から北上する台風のコラボで記録的な大雨に。西日本から東日本にかけて「線状降水帯」が次々と発生し、被害が相次ぎました。

気象庁は「雨の強さと降り方」について、予報用語を以下のように定義しています。
1時間10~20㎜ やや強い雨 ・1時間20~30㎜ 強い雨 ・1時間30~50㎜ 激しい雨 ・1時間50~80㎜ 非常に激しい雨 ・1時間80㎜~ 猛烈な雨

予報用語の説明にはそれぞれの強さの雨が降った場合に、人が受けるイメージについても記載があります。たとえば激しい雨は「バケツをひっくり返したように降る」、非常に激しい雨は「滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)」、猛烈な雨は「息苦しくなるような圧迫感があり恐怖を感じる」などといった表現で説明しています。
参考:雨の強さと降り方(気象庁HP)

では、この表現からどれくらい具体的に雨の降り方をイメージできるでしょうか。イマイチよく分からない…という方もいるかもしれません。

そこで、RCCウェザーセンターの気象予報士が、雨の降り方の再現では世界最大級の能力を誇る実験施設で「猛烈な雨」を体験しました。

今回体験したのは、2022年夏の気象予報士試験に合格して、2023年春からRCCウェザーセンターの一員に加わった近藤志保気象予報士。訪れたのは茨城県つくば市の防災科学技術研究所にある大型降雨実験施設です。

近藤志保 気象予報士:
「災害を引き起こすような雨が降ると、どのような体験となるのか、私もまだ未経験ですが、今から体験してこようと思います」

こちらの実験施設では最大10分間50㎜(1時間300㎜)の猛烈な雨を降らせることができます。

今回、近藤気象予報士は、以下の3つの強さの雨の降り方を体験しました。
10分間10㎜(1時間60㎜)
・10分間30㎜(1時間180㎜)
・10分間50㎜(1時間300㎜)

【10分間10㎜】都市部で排水が追い付かなくなる

10分間10㎜の強さは、夏の夕立などで雨の降り方がピークの時にみられるレベルです。

近藤志保 気象予報士:
「降ってきました。10分間に10㎜、1時間60㎜の雨の量です。大きな雨の音が傘に響いています一つ一つの雨粒が大きいですね。」

この10分間10㎜の強さの雨が数十分以上降り続くと注意が必要です。都市部の下水道は1時間50㎜程度の激しい雨に対応するよう整備計画が進められているのが一般的です。10分間10㎜の強さの雨が降り続くと、排水能力が追い付かずに浸水被害が起こり始めることがあります。

【10分間30㎜】広島土砂災害の猛烈な雨に匹敵

近藤志保 気象予報士:
「雨が強くなりました。10分間に30㎜、2014年の広島市の土砂災害で起こった雨の量に匹敵する雨量です。路面は排水が追いついていません。足元が一面、水たまりのようになりました。」

77人が犠牲となった2014年の広島土砂災害では、当時、被災地周辺に設置されていた雨量計で10分間最大30㎜の雨量を観測しました。同じような場所で2時間あまりにわたって降り続いた猛烈な雨は、「線状降水帯」がもたらしたものでした。

近藤志保 気象予報士:
「遠くを見てみると白くかすんでいて視界が悪くなっています。15メートル先のスタッフを見ていますが少し見えずらくなっています。今、自分がしゃべっている声、少し聞き取れないくらいの雨の音になってきました。」
「この状況で助けを求める声や、防災無線などがあっても聞こえないんじゃないかなというような、そんな大きな音がしています」

【10分間50㎜】国内 “最強レベル”の猛烈な雨

そして雨の強さは「10分間50㎜」へ…。国内で観測された“最強レベル”の猛烈な雨です。

全国に約1300か所ある気象庁の雨量観測点のうち、これまでに10分間50㎜以上を観測したのは3か所あります。
・木古内(北海道)55㎜
2021年11月2日
・熊谷(埼玉)50㎜
2020年6月6日
・室谷(新潟)50㎜
2011年7月26日

近藤志保 気象予報士:
「先ほど10分間30㎜の雨でも大きな音がしていましたが、それ以上ですね。バケツをひっくり返した雨と言われることもありますが、数十個のバケツが傘の上でひっくり返されているような、そんな雨の量です」

“最強レベル”の猛烈な雨は、過去には広島県内でも降っています。2010年に庄原市を襲った局地的な豪雨では、庄原市西城町大戸に設置されていた雨量計で10分間44㎜を観測

記録的に猛烈な雨に見舞われた山々では斜面の崩落が相次ぎました。翌日、RCCヘリコプターで現場上空を訪れると、山々には爪でひっかいたような無数の土石流の痕跡が残されていました。

近藤志保 気象予報士:
「10メートル先に番組のスタッフがいます。『私の声、聞こえてますか!私の声聞こえますか!』…おそらく10メートル先のスタッフには私の声が聞こえてないようです。」
「きょうは昼間で施設内には少しあかりがあるのですが、これが夜だと考えると、とてもじゃないけど見えないと思います。この雨が降り続くとすごく恐ろしいです。」

小林康秀 キャスター:
「声も近くにマイクがあるから聞こえてますけど、たぶん近くの人たちは今の声は聞こえてないでしょうし、昼間なのに本当にまわりが視界がなくなって昼なのかどうなのかよくわからない状況になりますね。」

中根夕希 キャスター:
「私も広島に2014年から住んでいますが、その年は広島土砂災害、2018年の西日本豪雨を経験して初めて雨はこんなに恐怖をもたらすものなんだと感じたんですよね。だからこういう強い雨になる前に本当に避難しないといけないなと感じますよね。」

近藤志保 気象予報士:
「実際に私が体験したのは広い平坦な土地だったんですが、実際の路面というと側溝があったり傾斜があったりすることが多い。そうなると余計に身動きがとりづらいのではないかと感じました。この数字だけではない雨の降り方、私も体験しましたので、これから気象情報を伝える際に生かしていきたいと思います。」

小林康秀 キャスター
「やはり身のすくむようなおもいだったのではないですか?」

近藤志保 気象予報士:
「そうですね、おそろしいっていうのを雨で初めて感じました。」

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