煮干しでフリット、切り干し大根をサラダに…乾物を自在にアレンジ 「DRYandPEACE」田平恵美さん

「乾物は常温で長期保存ができる」と語る田平恵美さん=埼玉県入間市内

 「パパセカ」はスペイン語で、干したジャガイモを指す。2010年に南米食材店で見つけた。ジャガイモは日本でも一般的な野菜だが、乾物になった状態を見たことはなかった。「乾物なら故郷の食べ物も簡単に持ってこられる。研究すると面白いのではないか」。それが田平恵美さん(63)と乾物との出合いだった。

 「乾物は常温で長期保存ができる。水分が抜けているので、ほぼ腐らない」。その特性を実感する時は、まもなく訪れた。翌11年の東日本大震災だ。当時住んでいた神奈川県では計画停電が行われ、生鮮食品の保存が難しくなった。一方でスーパーに赴くと、乾物は棚に残されていた。「誰も使い方を知らないのではないかと思った」。田平さんは振り返り、「使う癖がついていれば、もしもの時に役立つ」と語る。

 日本で乾物といえば「和食の食材」。そんな印象を変えようと、世界の料理へのアレンジを試みた。ヨーグルトで戻すと、煮干しはフリットに、切り干し大根ならサラダに姿を変える。「トマトジュースで乾物を戻せばトマトシチューもできる」

 ダイコンを乾物にした場合、数字上の重さは約10分の1になる。輸送時の負荷の軽減や食品ロス削減にも道を開くという。「少しずつ乾物にシフトしていけば、何かが変わる」と未来への期待を寄せる。

 「食卓は社会とつながっている」。そう考えて「食育」に取り組んだ。サステナブル料理研究家のサカイ優佳子さんと「DRYandPEACE」を立ち上げ、乾物や米粉を活用した料理を研究。今年4月には共著「キッチンからはじめるSDGs 乾物と米粉でサステナブル・クッキング」(実生社)を出版した。

 こども食堂やフードバンクに乾物を提供できる仕組みができないかと思案する。「例えばトマトジュースと組み合わせ、レシピと一緒に届ける。小さな取り組みも、皆が行うことで大きくなる」。乾物を巡るイメージが裾野を広げていく。

© 株式会社埼玉新聞社