コップで飲む時に口からこぼれる、寝ている時によだれ垂れる…30代男性の悩み 考えられる原因、病気は

コップで飲む時に口からこぼれる、寝ている時によだれ垂れる…30代男性の悩み

 数カ月前から、飲み物をコップや水筒で飲む時に、口からこぼれてしまうことが増えました。また、以前から寝ている時によだれが垂れることも気になっています。何かの病気でしょうか。(福井県福井市、30代男性)

【お答えします】浅野礼・福井県立病院脳神経内科医長

■顔面神経麻痺かも

 コップから水を飲む際に口からこぼれてしまう、睡眠時に口角から唾液がこぼれてしまうといった症状の代表的な原因として、顔面神経麻痺(まひ)があります。同じ水を飲む動作でも、口の小さい容器で流し込む動作は顔面の筋肉をあまり使用しないので問題なくできることが多いです。

 鏡で自分の顔の状態をよく観察してみてください。顔の片側だけ口角が下がっている、鼻と口の間の溝(鼻唇溝(びしんこう))が薄くなっている、まぶたが下がっている、額のしわを寄せられないといったことはないでしょうか? これらが見られる場合、顔面神経麻痺の可能性が高いです。

 顔面神経麻痺は「中枢性」と「末梢(まっしょう)性」に区別されます。中枢性は脳や脳幹の病変が原因であり、代表的な疾患として脳梗塞、脳出血、脳腫瘍などが挙げられます。末梢性は脳幹部から顔面に伸びる顔面神経にウイルスが感染して起きることが多く、ストレスによる免疫力低下が関係することもあります。まれに神経周囲の損傷や腫瘍が原因となることもあります。また、原因がはっきりと特定できないことも多いです。

■治療が遅れると麻痺残る場合も

 顔面神経麻痺の経過は原因によってさまざまです。末梢性の場合、自然治癒することもありますが、治療が遅れると麻痺が残る可能性が高くなります。中枢性の場合、原因である病巣の拡大によって症状が悪化したり、新しい症状が出たりする可能性があります。

 ともあれ、まずは原因についてしっかりと調べる必要がありますので、まだ症状が続いているのであれば医療機関の受診をお勧めします。治療は中枢性であれば脳神経外科、末梢性であれば耳鼻科にて行われるのが一般的です。顔の状態から麻痺の種類が分かりそうであればお近くの耳鼻咽喉科または脳神経外科を受診いただくのが良いでしょう(もし見立てが間違っていても、適宜紹介をしてもらえるので心配はいりません)。どこを受診して良いか分からない場合は、脳神経内科または(初診料はかかりますが)総合病院を受診するのも選択肢となります。

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