駄じゃれ交じりの短歌、キノコ手に踊る写真… 「らんまん」モデル、牧野富太郎に親しんで 兵庫・加東

牧野富太郎の人間くささがうかがい知れる「結網帖」。レプリカは手に取って確かめられる=加東市下久米

 NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルで植物学者・牧野富太郎(1862~1957年)の人となりを、直筆資料やパネルで紹介する企画展が、兵庫県加東市下久米の兵庫教育大学付属図書館内の教材文化資料館で開かれている。精緻で美しい植物画のほか、駄じゃれ交じりの短歌や年頭所感をしたためた私家本「結網帖(けつもうちょう)」など、同資料館収蔵品を中心に約40点を展示。歴史に名を刻む「植物分類学の父」の驚くばかりの植物愛と、ユニークな横顔に浸ることができる。(岩崎昂志)

 企画展名は「植物に恋して-牧野富太郎のいざない」。同大学の山田卓三名誉教授(発生遺伝学)が同資料館に寄贈したコレクションに牧野関連の資料が複数あり、ドラマ放映に合わせて広く関心を寄せてもらおうとスタッフが企画した。

 生涯を研究にささげた牧野の素顔に触れられるのが、親しい人のみに配ったとみられる「結網帖」だ。「結網」は牧野の雅号で、1945(昭和20)年ごろのものとされる。蛇腹状に折りたたんだ約60ページに、力強い筆跡や写真が残る。

 植物博士のイメージそのままに「我が回顧/草を褥(しとね)に/木の根を枕/花と恋して/五十年」と書いたページがあれば、「一生を/貧ほで/暮(くら)す/富太郎/富ん太郎とハ/とんだ貧乏」と資金難に悩んだ自らを笑い飛ばすような記述も。妻・寿衛(すえ)を思った文章や、森の中で両手にキノコを持って踊る写真もある。会場には分かりやすい解説パネルが並び、手に取って読めるレプリカも鑑賞を助ける。

 石版印刷の技術を身に付けた牧野の著作「日本植物志図篇(しずへん)」などの植物図の展示では、細部までこだわった筆致に情熱がにじむ。高知県で生まれ、全国を歩いて研究した牧野が兵庫県内各地で残した足跡をまとめたパネルもある。企画展に合わせ、植物を研究する同大学理数系教科マネジメントコースの山本将也助教らが大学構内で植物探検をする映像展示は、季節によって内容を入れ替える予定だという。

 同資料館の生西悦子さん(30)は「植物図の緻密さはため息がでるほど。間近でじっくりと見てほしい」とPR。同僚の東千尋さん(25)は「結網帖がすごく面白い。駄じゃれ好きの一面に親しみが持てます」と話す。入場無料。期間は来年2月23日まで。平日午前8時半~午後10時、土日祝日は午前10時~午後5時。開館状況は同大学付属図書館ホームページに随時掲載する。教材文化資料館TEL0795.44.2362

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