【高校野球 広島大会・注目校紹介】たった1人の3年生 選手宣誓へ 部員不足乗り越え… 主将と監督の思いが夢をつなぐ 熊野高校野球部

高校野球 広島大会が、7月8日に開幕します。甲子園を目指す球児たちの姿を、「つなぐ夏」をテーマに追います。今回は、熊野高校(広島・熊野町)です。この夏の大会、部員不足で出場が危ぶまれましたが、キャプテンと監督の熱い思いが夢をつなぎました。

夏の県大会の組み合わせ抽選会。選手宣誓を決めるくじで大役を引き当てたのは、熊野高校 野球部キャプテンの 村山元規 でした。

熊野高校 3年 村上元規 主将
「どこの高校もがんばってきていると思いますけど、自分も人に負けないくらい、がんばってきたと思うので、そのがんばりをもって、人の前に立って代表として宣誓をしたいなと思ったので立候補しました」

村山は、熊野高校でたった1人の3年生部員です。これまで部員が9人そろわず、秋の大会は呉商業との連合チームでなんとか出場しましたが、春の大会には出場できませんでした。

熊野高校 岡田和之介 監督
「高校野球をしに熊野高校に入って来てくれた子がほとんどなので、9人そろえてやれなかったという申し訳ない気持ちが強いですし、今の18人いることが非常にありがたいことだと。単独チームで臨めることがありがたいことだとひしひしと感じています」

キャプテンの村山が中学3年生のとき、熊野高校は新型コロナの影響で独自大会となった夏の大会でベスト16入りする快進撃を見せました。

村山元規 主将
「自分が一番に思ったのは、今の岡田先生が来てからいきなりベスト16という結果を残したので、監督の力はすごいんだなと率直に思ったので、指導を受けてみたいと思って入りました」

その年から熊野高校を指揮している 岡田和之介 監督。大会で結果を出した一方、部員の勧誘に苦しみます。

村山の学年で入部したのは1人。一つ下の学年で入部したのは4人。新チームになってからは部員5人で活動する日々を過ごしました。

不安を抱きながらチームを引っ張るキャプテンに岡田監督から、ある提案がありました。

村山元規 主将
「2年生の夏が終わってから岡田先生の方から『人数少ないからこそ、2人の絆っていうか親ぼくを深めていきたい』って話をしてもらって、『朝練を始めないか』と提案をしてもらいました」

熊野高校 岡田和之介 監督
「村山元規が学年で1人ということなので、ぐちを言ったり、不満を言ったり、そういう相手がいないのじゃないかなって、ぼく自身感じて、元規と2人の時間を作りたいという思いで朝練習を始めました」

毎日、続けた2人だけの朝練習―。部員が9人そろわず、十分な練習もできない状況でしたが、キャプテンと監督は野球への思いをつなぎました。

そして、もう1つ、2人をつないでいるのが、村山がつけているグラブ。岡田監督が高校時代に使っていたものを譲り受けました。

村山は、下を向きたくなったとき、そのグラブを見て、自分を鼓舞します。

熊野高校 3年 村山元規 主将
「この文字を見ると、もらった当初のことを思い出して、『もっとがんばろう。まだ底辺だから、もっともっと上を目指そう』という気持ちになります」

岡田監督は、村山の最後の大会はなんとしても熊野高校単独で出場させたいと、熊野高校への勧誘で近隣のクラブチームに足繁く通いました。

その努力が実を結び、4月には1年生13人が入部しました。

岡田和之介 監督
「直接、話をしに行かせてもらって今の現状、当時、2年生だった村山が1人でがんばっているということと、やるからには甲子園目指して本気で野球がやりたいって、自分自身の熱い思いも伝えて勧誘しました」

村上元規 主将 「めちゃくちゃうれしくて単独で出られるっていうのもうれかったし、一緒にやる仲間が増えたっていうのもとてもうれしかった」

キャプテンと監督が願い続けた熊野高校単独チームでの県大会出場―。勝って熊野高校の校歌をとどろかせるため、全員野球で挑みます。

熊野高校 岡田和之介 監督
「ずっと一緒にやって来た2年生も1年生もみんなが口をそろえて『元規のために』『ゲンさんのために』というふうにやっているので、全員が最後の夏というような強い気持ちを持って夏を迎えたら、たとえ負けても悔いの残らない夏になるのではないかと思います」

熊野高校 3年 村上元規 主将
「思い出作りに行くのではないので、勝ちを取りに行くのであって、全力で大きい声を出して、一球一球に命かけてプレーしていこうと思います」

© 株式会社中国放送