最先端XRで軍艦島の“暮らし”再現 国内外の歴史家、建築家らプロジェクト

HPで公開している3DCGの映像の一部。職員住宅の内部から神社など外の風景を実際に眺めているような感覚が味わえる

 世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産、長崎市の端島(軍艦島)。日本の産業近代化をけん引し、時代の流れとともに1974年に閉山した炭鉱の島だ。国内外の歴史研究者や建築家らが操業時の暮らしを最先端のXR(クロスリアリティー)技術などで再現し、疑似体験できるようにする研究プロジェクト「ザ・ハシマXRプロジェクト」に取り組んでいる。歴史や文化を保存し、歴史教育に活用する狙いで、年明けの一部公開を目指している。
 同プロジェクトは、実世界と仮想的な映像や情報を融合し、多様な視覚体験を可能とするXR技術を活用。70年ごろの炭鉱施設や住宅といった建造物や生活用品を忠実に再現し、歴史上の人物との会話などゲーム形式でプレーヤーが疑似体験しながら、産業近代化の歩みへの理解を深める。
 端島は明治初期に開発が始まり、良質な海底炭鉱として発展。16年に日本最古の鉄筋コンクリート造アパート「30号棟」が完成するなど、高層住宅群が形成された。戦後の最盛期には5千人以上が暮らし、周囲1.2キロほどの小さな島は世界一の人口密度を誇った。
 「生活やテクノロジーなど産業化の歴史的な力が美しく融合した場所」。共同研究代表で東京大東洋文化研究所のクリストファー・ガータイス准教授(日本近現代史)はこう評価する。
 約2年前に本格的に始まった同プロジェクトには、英国のゲームデザイナーや、実測データを基に建造物をCGで再現するなど端島の研究を続ける同市の建築家、中村享一さん(72)らが参加。中村さんらが手がけた建造物の3DCGに、ゲームデザインの技術を加えた映像をホームページ(HP)で一部公開している。今後は当時の生活用品を3Dスキャンし、デジタルアーカイブ化することなどを計画する。
 中村さんは「日本の産業近代化の象徴と言える端島の歴史を読み解くことで未来を見据える良い教材になる」と意義を強調する。
 7月22日午後3時から長崎市尾上町の出島メッセ長崎でシンポジウムを開く。所定のフォームから事前に申し込みが必要。入場無料。

© 株式会社長崎新聞社