姫路は235人! まちの魅力を発信する「大使」、ちょっと多すぎません?!

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 「○○さんを姫路ふるさと大使に任命します」。兵庫県姫路市役所を担当して2年半、市の魅力を発信する大使就任の知らせを何度も受けてきた。市のホームページの一覧には、バレーボール女子日本代表監督の真鍋政義さんやサッカー解説者のセルジオ越後さんら著名人の名前がずらりと並ぶ。担当者に聞くと、その人数はなんと235人。ちなみに同県内では同様の大使は明石市が9人、神戸市でも16人という。姫路の大使、いくらなんでも多すぎません?(田中宏樹)

 「大使が増えたら、多彩な分野でPRしてもらえる。デメリットはないですよ」。姫路市観光課の担当係長、田代裕昭さん(47)がそう言って、大使を務める著名人を教えてくれた。 ▼分野も幅広く

 落語家の桂米團治(よねだんじ)さんや人気ロックバンド「ノーベルブライト」のボーカル竹中雄大さん、演歌歌手の丘みどりさん…。ほかにも毎日放送(大阪市)アナウンサーの松本麻衣子さん、森永製菓社長の太田栄二郎さんらもいて分野も幅広い。いずれも出身や学生時代を過ごすなど、姫路に関連がある人たちだ。

 大使は2004年に「ひめじ観光大使」として誕生し、18年に現在の名称に変更された。大使に求められる大きな条件が市の魅力の発信力で、観光PRの実績がある市内在住者や市外で暮らす姫路にゆかりがある人を市が選ぶ。

 任期は3年ごとに更新される。市は姫路城招待券が付いた名刺や観光施設の無料券などを贈り、発信力を生かしてPRしてもらう。

 制度が始まった04年度は79人、翌年度には39人が就任。現在の名称に変わった18年度以降は毎年10人前後が任命され、22年度は近年で最多の22人だった。田代さんは「少しでも姫路と関係があると聞けば、積極的にアプローチしている。断られた記憶はほとんどないですね」と笑顔を見せる。 ▼うらやましい

 県内では、加古川市出身の俳優上野樹里さんが21年12月に「加古川観光大使」に就任し話題になった。自転車で市内を巡る動画を公開するなど、積極的に活動する。同市出身のお笑い芸人陣内智則さんらも観光大使を務めるが、人数は計19人と姫路に遠く及ばない。

 姫路と同じ中核市の西宮や尼崎は過去に大使を任命したことはあるが、現在は0人だ。明石市の大使は同市出身のフリーアナウンサー赤江珠緒さんら9人で、市の担当者は「大使の発信力はありがたい存在。200人以上もいる姫路がうらやましい」と口にする。

 兵庫県多可町は22年12月に「ふるさと親善大使」を創設。1人目として、同町生まれで22年度のプロ野球セ・リーグ新人王に輝いた巨人の大勢投手(本名・翁田大勢)が就任した。 ▼郷土愛の強さ

 姫路市は今も十数人を大使の候補とし、任命の機会をうかがっているという。田代さんは「ここまで来たら、どんどん増やしたい」と意気込む。

 それにしても、なぜ姫路はこれだけ多くの人が大使を受けてくれるのだろう。「やはり郷土愛の強さでしょう。地元や古里のために、引き受けてくれていると思います」。田代さんの表情はどこか誇らしげだった。

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