「マイナ保険証」トラブル、県内でも 医療現場「不完全すぎる」

「マイナ保険証」利用の環境整備が県内でも進む一方、相次ぐトラブルに医療機関側からは不満や戸惑いの声も上がる=酒田市(文中の施設とは関係ありません)

 マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」のトラブルが全国で相次ぐ中、県内でも「他人の情報にひも付けられていた」ケースなどが確認されている。トラブルに直面した医療現場からは「不完全すぎる形で始まった。現場のことを分かっていない」と不満の声も漏れる。厚生労働省は「登録されたデータの総点検を進めるなど、今後は誤りがないように対応する」としている。

 村山地方のクリニックで今年5月ごろ、女性患者がカードを読み取り機にかざした際、本人のものとは異なる保険証の記号・番号が表示された。再度かざしても違うデータのままで、事務員が患者に確認したところ、保険証を変更してはいなかった。その日は従来の保険証で対応したが、患者は戸惑った様子だったという。

 このクリニックでは、保険証に変更があった患者の情報がマイナ保険証に反映されていないケースもあったという。マイナ保険証のみでは資格取得日や職場の名称を確認できないため、担当者は「新規で受診する患者らは従来の保険証と二重で確認する必要があり、便利さを感じない」と話した。相次ぐトラブルに対し「信頼性に疑問を感じる。情報の登録・管理をしっかりしてほしい」と改善を求める。

 マイナ保険証によるオンラインでの資格確認は今年4月から、医療機関側の体制整備が原則、義務付けられた。厚労省によると6月25日現在、本県では医療機関・薬局の88.9%が読み取り機を設置・運用しており、参加率は岩手県に次いで全国で2番目に高い。

 他人の情報がひも付いていた場合、窓口負担の割合が高くなるなどの不利益に加え、薬の処方歴といった個人情報が第三者に閲覧される恐れもある。別人の情報が誤って登録されたケースは、全国でこれまでに7372件確認されている。

 現行保険証の廃止に慎重な見方が広がる一方、政府は経過措置を設けつつも、来年秋にマイナ保険証に一本化する方針を崩していない。加盟医療機関を対象に調査を行った任意団体の県保険医協会は「現状では明確な改善策が見えず、現行保険証も引き続き利用できるようにしてほしい」と訴える。

【マイナ保険証を巡る県内医療機関でのトラブル】

(県保険医協会の会員対象の調査より。複数回答)

無効・該当資格なしと表示されるなど保険者情報が正しく反映されていない(89件)

カードリーダーやパソコンの不具合で読み取りができなかった(69件)

ICチップの破損などマイナ保険証の不具合で読み取りができなかった(26件)

他人の情報にひも付けられていた(3件)

トラブル発生に伴い、患者から苦情があった(12件)

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