夏の甲子園県予選特集 注目校紹介(4) 負けが良薬となり明豊野球に原点回帰 【大分県】

高校球児の熱い夏がやってきた。憧れの甲子園を目指し、第105回全国高校野球選手権の県予選が7月8日に幕を開ける。大会序盤から激戦は必至、実力伯仲のトーナメントの頂点に立つのはどのチームなのか。大会を前に、優勝候補となるシード校を紹介する。

第4回は大会史上初となる3連覇を目指す明豊だ。

4月の九州地区高校野球大会県予選で大分舞鶴に、5月の県高校野球選手権大会では大分商業に敗れた。2020年秋から続く県内無敗が途切れたが、負けたからこそ改革に乗り出せる「良薬」となった。川崎絢平監督は「結果が出ていたのでテコ入れできないこともあった。選手の能力や考えで自分たちがやりやすいように野球をさせていたが、今は違う」と話す。

相手投手の配球の考え方、走塁や守備などアウトカウントや走者がどの位置にいるかなどのケースによって、チームとしての狙いを細部まで落とし込んだ。「今までも言ってきたことだが、より状況判断が明確にできるように細かく設定をした」(川崎監督)。また、グラウンドでの振る舞いも正し、常に全力疾走を求めたことで練習から緊張感が生まれた。当たり前のことを当たり前にする明豊野球の原点に戻ったことで選手に迷いがない。

春先からけがで戦列を離れていたセンターの西村元希(3年)、キャッチャーの義経豪(同)の軸となる選手が復帰したことで、守備だけでなく打線を組みやすくなった。2年時から主力として試合に出る西村は勝負どころを察知し、周囲を巻き込むことができる。その西村とともにクリーンアップを任せられる義経は長打があり、ポイントゲッターとなる。

けが人が復帰し戦力がそろった明豊

「今年は投手中心の守りのチーム」と川崎監督が明言する、投手陣は実力派がそろっている。最速145キロのストレートとキレのある変化球で三振を取れる中山敬斗、1年の夏から甲子園のマウンドに立つ森山塁に加え、清藤真沙也、杉本天聖、竹本哲太と3年生投手が最後の夏に向けて闘志を燃やす。中山は優勝への道のりを思い描く。「(シード校が順当に勝ち上がれば)準決勝で舞鶴、決勝で大分商業と対戦できる。春に負けた2校にしっかり勝ってこそ甲子園がある。対策されても圧倒的な力でねじ伏せるぐらいの強い気持ちで投げたい」

大会3連覇について、川崎監督は「歴史はつくりたくてもつくれるものではない。挑戦できるチャンスをもらったが、毎年3年生にとってはこの夏が最後なのでいつもと変わらない。普段通りの野球をして、安定した力を発揮できればいい」と口ぶりにも自信が漂う。練習で追い込んだ6月を振り返り、「例年になく順調」と話す。大会に向けた調整段階に入り、気負いもなく平常心で大会に臨めそうだ。

圧倒的な力を見せつけたいと語った中山敬斗

(柚野真也)

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