【SNS特報班】西米良 出生率なぜ県内トップ

地域で育てる風土 後押し 高卒まで計570万円 支援充実
 昨年、授業の一貫で県の人口統計を調べました。西米良村は県内で最も人口が少ないのに、出生率はトップでした。要因を調べてください。高鍋高2年・西田慎之介さん(16)
 西田さんは2021年の県の人口動態統計を基に調査を進めた。西米良村の出生率は、県内トップの11.17。一方、人口は県内最少の985人(21年10月)、高齢化率は40%に及ぶ。
 2位の三股町(9.56)は周辺自治体から子育て世帯が流入しており、状況は異なる。西米良村が高い要因を調べたが、西田さんは「思ったようなデータがなく、結論を出せなかった」という。
 出生率は自治体の総人口を基に計算するため、小規模自治体は出生数が少し増えるだけで出生率も上がる。同村も当てはまるが、ほかの山間部の小規模自治体の出生率は3~5程度。ここ十数年、村では毎年4~12人が生まれており一過性の現象ではないようだ。
 要因を調べるため、同村を訪ねた。3人の娘を育てる黒木愛美(えみ)さん(35)に話を聞くと「宮崎市に住む姉から子育て支援の充実ぶりを驚かれた」と明かす。
 村の子育て支援一覧には、出産祝い金や子育て支援券、高校就学支援手当など20項目以上が並ぶ。産婦人科や高校がない村のマイナス面を補う内容も。村の概算では、子ども1人が高校を卒業するまでの支援額は570万円を超える。
 21年度決算ベースで、子ども対象の福祉サービスにかかる費用・児童福祉費(15歳未満1人当たり)は約107万1千円で、日之影町と並び県内トップ。村福祉健康課の吉丸和弘課長は「村の予算全体に占める額は大きくないが、子ども1人では手厚い」と強調する。
 村内では複数の子どもを育てるのは珍しくない。愛美さんの夫・泰斗(たいと)さん(39)は「子どもが生まれたら周りも喜んでくれる。地域で育てる風土もあるのでは」と指摘。行政の支援と村の雰囲気が絡み合い、出生率を押し上げているようだ。
 ただ、高校進学をきっかけに村を離れ、戻ってこないケースは多い。自然減の解消は容易ではなく、1990年に1852人だった村の人口は2022年にほぼ半減した。45年の推計人口は566人とさらに減少する。
 村は移住者の呼び込みに力を入れる方針で、吉丸課長は「安心して出産や育児ができる環境を整え、人口減対策や移住につながれば」と話している。
 出生率 人口千人に対する出生数の割合。1年間の出生数を人口総数で割って計算する。1人の女性が、生涯に産む子どもの数を推定する合計特殊出生率とは異なる。

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