「農地に盛り土するケースも結構ある」盛土監視機動班に密着 44か所是正も“違法業者”とのいたちごっこ続く

2021年の熱海土石流災害を受けて、2023年5月に「盛土規制法」が施行され、国の法制度も変わりました。土石流以前の静岡県の条例は、書類を出すだけで手続きができる「届け出制」で罰金も20万円にとどまります。対して、国の「盛土規制法」は厳しい審査基準がある「許可制」で法人の罰金は最大3億円以下。懲役も3年と大幅に厳しくなりました。その違法な盛り土を静岡県内で取り締まるのが「盛土監視機動班」です。SBSのカメラはその活動に同行しました。

<盛土監視機動班>

Q.どこの土持ってきた?

<土を運んできた業者>

「自分の現場から持ってきたものあるし、友達の現場から持ってきたのもあるし、いろいろ」

熱海土石流災害を受けて発足した「盛土監視機動班」。この日は、不適切な盛り土を是正するため、土を運んできた業者への行政指導が行われていました。

<盛土監視機動班>

「現場で土を入れていた人にも責任が出てくるもんですから、そこら辺をちょっと整理しようかなと思ってますけど」

<土を運んできた業者>

「それは、それはいい。全然いいよって。全然いいじゃないけど、自分がやったから仕方がないと思っている」

この土地には、県の基準を超える土砂が無許可で盛られていて、口頭での行政指導に至りました。

県は土石流災害を受けて、盛り土に対する規制や監視を強化するため、「盛土対策課」を2022年4月新たに設置。同年7月には、住民からの情報提供を受けつける「盛り土110番」の運用を始め、通報などから県内には不適切な盛り土が207か所もあることが分かりました。

「盛土監視機動班」が6月29日、向かったのは静岡県富士宮市の山間部。富士山周辺には広大な土地があり、盛り土の造成が横行してきました。

<盛土監視機動班>

「ここの概要だけ説明してもらってもいいですか」

<富士宮市の職員>

「こちらは2022年8月くらいに通報があって現地に見に来たところ、トラックが何台か来ているということで、土が勝手に埋められているという話で」

通報は市に寄せられる場合もあり、その情報が県に伝えられると「盛土監視機動班」の出番。パトロールは週3回に及ぶといいます。盛り土の状況が危険だと判断された場合は、造成した業者などに口頭や文書で行政指導を行います。

しかし、残土ビジネスで儲けようとする業者側も抜け道を探そうと必死で、違法な盛り土をめぐる状況は変化しています。その盛り土は、主要道路のすぐ脇の農地につくられていました。

<盛土監視機動班>

「最近の傾向として、農地に盛り土をされるっていう状況が結構あります」

これまでは人里離れた山林につくられることが多かった盛り土ですが、最近では耕作放棄地を中心とした農地が温床になっているといいます。畑を耕せなくなった農家から格安で土地を借り受け、そこに違法に残土を捨てる。農地に造成された事例は、すでに43件確認されています。

残土ビジネスに詳しい専門家は違法な盛り土を造成する業者だけでなく、土の処理を依頼した業者にも責任を負わせなければ危険な盛り土は減らないと指摘します。

<桜美林大学リベラルアーツ学群 藤倉まなみ教授>

「変な業者を選んだら、あなた(依頼者)のところに請求書がいきますよという仕組みをつくらないと、また繰り返されてしまう。未然防止にならないというところが問題なんですね」

<井手春希キャスター>

「盛り土110番」の設置をきっかけに、県の把握した不適切な盛り土207か所のうち、4月末までに44か所が是正され、県内にはいま、163の不適切な盛り土が残っています。不適切な盛り土は特に富士山麓に集中していますが、県内35市町のうち、約8割にあたる28の市町で確認されているのも実状です。

熱海土石流のような被害を二度と起こすまいと、行政を中心に必死の対策が続きますが、残土で儲けようとする違法な業者とのいたちごっごは、災害から2年が経ったいまも続いています。

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