よゐこ有野、日本の健康寿命を知りショック「嫌ですね…」

お笑い芸人・よゐこの有野晋哉さんが、毎月さまざまな専門家をゲストに迎えて、お金の知識を身に付けていく「お金の知りたいを解決!お金の学園〜学級委員・よゐこ有野晋哉〜」。2023年7月は社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーの井戸美枝先生に、終活について伺いました。


有野晋哉(以下、有野):あ~、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』がやること多すぎて、全然時間が足らへん。コントローラーも新調したし、ガシガシ進めないと……でも、楽しいゲームが終わりに近づいてくると、「まだやってたい」「エンディング見るのもったいない」って思っちゃうし、なかなか終わりが見えないくらいが丁度いいのかもしれへんな。

井戸美枝(以下、井戸):有野さん、おはようございます。

有野:あ、今月の先生ですね。おはようございます!

井戸:はい、社会保険労務士とファイナンシャルプランナーの井戸です、よろしくお願いします。じつは私、出身もいま住んでいるのも神戸なので、有野さんに釣られて関西弁が出てしまうかもしれません(笑)

有野:そうなんや、めっちゃ親近感わくわぁ(笑) こちらこそ、よろしゅうたのんます!普段使わへん関西弁です。

後悔先に立たず

有野:それで先生、今月はどんなテーマで授業をしてくれはるんですか?

井戸:今月は、「終活」についてのお話をさせていただきます。

有野:お~、終活ですか。ちょうどいま、ゲームの終わりについて考えていたところです。どこまでやりこんでお終いにするか、ですよね?

井戸:う〜ん、それとはちょっと違いますが(笑) 「終活」は読んで字のごとく、「終わりに向けた活動」。自分や配偶者、あるいはその両親が亡くなった時のための準備をしておこうということですね。この授業では終活について、私自身の経験も踏まえながらお話ししましょう。

有野:なるほど、誰にでも訪れる、考えたら重い気持ちになるけど、やっておかないといけない身近なテーマなので、いろいろ知りたいです!

井戸:ちなみに、有野さんは「終活」というとどのようなイメージをお持ちですか?

有野:「税金」の授業の時にも話したんですけど、オトンが亡くなったとき、相続でいろいろと面倒なことが多かったので、残された家族の為には「やっておいたほうがええよな」とは思ってます。後悔先に立たずとはこのことやなぁって。

井戸:面倒なこととは、どんなことでしょうか?

有野:特に不便を感じたのは、銀行の口座を中心に「どこに何があるのか」という記憶、記録がまったく聞いてなかったことですね。昔の人やから、お金の話って「子どもは心配すんな」って言う世代で、大人になっても聞いたことなかったんですよ。オトンの実家は鹿児島なんですけど、亡くなって親戚のおじさんから電話かかってきて、結構広い土地を持ってたのが分かって。そういえば小学生の頃、「あの山のあの辺と、この山のこの辺とお父ちゃんの土地やから、大きなったらやるわ」って、言うてたのを思い出したけど、本気にはしてなかったんですよ。でも、田舎の土地なんてもらっても仕方ないし、買い手を見つけるのも難しい。そこで、市に寄付をしようとしたら、役所の担当者に「いらないです」って言われたんですよ。いらんなんてことあるんや、って(笑) でも、区画整理しそうな場所でもないし、山奥すぎて管理も大変やろうし、そらそうかって。親戚のおじさんは「立派な杉の木が植ってるから売ったらええよ」って言うけど、売り方も分からんし、結局おじさんにもらってもらいました。

井戸:不動産については、「終活」においても難しい問題になりがちですね。

有野:「どこに何があるか」を探す手段さえなかったんで、どうしようもなくて、本当に困りました。オカンは健在なので、そういうのはきちんと記録しておかなあかんと思っていたんですが、気付いたら自分も50歳を迎えているんですよね。僕も終活はじめておかないとアカン。

認知症が発症すると契約行動が不可に

井戸:先ほども触れましたが、「終活」には両親をはじめとした家族のための終活と、自分のための終活の2つがあります。有野さんくらいの世代だと、その両方を考える必要がありますね。終活っていうと、なんとなくネガティブというか、嫌なイメージを持たれる方が多いと思うんです。

有野:そうやなぁ。伝えたとしても、「なんや! もう死ぬと思ってんのか!」って怒られたらとか考えたら、面倒な感じ。せなあかんとは分かっていても、なんとなく敬遠してしまう感じはありますね。うちの奥さんとも、「やっておいたほうがいいね」って話はしてるんです。まずはインターネットのIDやパスワードをまとめるところから、少しずつ終活をしようって話をしたら、すぐ「私はできたよ~。あなたも早くやってね」って言われて。それで、「わかった、わかった」なんて空返事だけして、それっきり手を付けていないんです。

井戸:まだ両親も自分も元気なうちだと、どうしても後回しにしがちですよね。ただ、終活は元気なうちにこそやっておくべきこと。病気やケガをしたり、認知症になったりしてからだと、スムーズに進められなくなるからです。日本人の平均寿命はだいたいどれくらいか、ご存じですか?

有野:確か男性は80歳くらい、女性は90歳くらいでしたっけ?

井戸:そうですね、いまは男性が81歳、女性は87歳になっています。では、「健康寿命」はいくつくらいだと思います?

有野:平均寿命じゃなくって、健康寿命? その言葉がよくわからへんです(笑)

井戸:健康寿命は、健康上、自分一人で日常生活を送ることができる年齢。裏返すと、健康寿命を過ぎると、日常生活をおくる上で何らかの不自由が生じる年齢でもあります。現在は、男性の健康寿命が72歳から73歳くらい。女性は75歳となっています。

有野:なるほど。寿命は80歳とはいえ、ずーっと健康か、って言うとそう言うわけでもない。年齢が上がるほどに、病気だったりケガだったり、身体に何らかのトラブルを抱えていて、介護が必要とか、自分一人で生活できなくなるってことですね。寿命より重要ですね、健康寿命か。

井戸:平均寿命から健康寿命を引くと、「健康上の問題で、日常生活に何らかの不自由が生じている」という期間、つまり介護などのサポートが必要な年数がわかります。男性はおよそ9年、女性はだいたい12年ですね。

有野:意外と長いなぁ〜。そんな、9年も家族に介護されなあかんのは気持ち的に嫌ですね……。自分でも身長180cmのお爺さんは邪魔やなーって思う。書類物とかの迷惑だけでもかけないようにしておきたいです。

井戸:この間、体の動きが不自由になるだけではなく、認知症が発症するリスクも高まります。認知症の発症を抑えるには運動が大事なのですが、日常生活に不自由が生じるレベルで身体に問題が起きているので、運動もできないわけですからね。

有野:確かに、生活さえできへんのに、ジョギングができるわけないもんなぁ。走りに行っても帰ってこられへんかも。「ここどこや?」って。

井戸:認知症が発症してしまうと、銀行預金の引き出し、証券会社での株や投資信託の売却、自宅の売却や修繕、相続税対策といった「契約行為」ができなくなるんですよ。

有野:え~、そうなんですか!? 家族が暗証番号さえ知ってたら、必要なお金やし「もらうで」って伝えて引き出せそうなものですけど。

井戸:それ、やられている人もいるかもしれませんが、本当はダメなんです!

遅くても還暦ころまでには「終活」をしておくこと

井戸:有野さんは、現金や預金以外に、不動産や美術品といった、相続の対象になるものはお持ちですか?

有野:ゲームソフトやフィギュアが大量にありますね。あ、あとグラビアの写真集が400冊くらいあります(笑)

井戸:そうなんですか! グラビアがお好きなんですね。

有野:これだけ持ってると趣味が仕事になりました(笑) でも、全部売れるかわからないですけど、なかには本人のサイン付きのものもあったりするので、価値が高いものもあると思うんですよね。でも、「有野さんへ」って書いてもらってるから、売るわけにもいかない。

井戸:もし、有野さんの身に何かあって、お子さんたちが大量のグラビア写真集を目の前にしたとき、「父ちゃん、こんなに持ってたんや……どないしよ」となってしまいますよ。

有野:確かにそうですね。しかも娘なので、もし自分の父親が山ほどグラビア写真集持ってて、それ処分せなあかんってなったら「私、嫌だよ」「私だって嫌よ、恥ずかしい!」って喧嘩しそう(笑) う〜ん、ここも迷惑かけられへんから、早くなんとかしないとなー。

井戸:「人生、何が起きるかわからない」などとよく言われますよね。人は、実際に自分の身に起きてからそれに気付くものですが、遅くても還暦を迎えるころまでには、「終活」を一度やっておくこと。それが親の責任というものです。もし、お子さんがいらっしゃらない場合でも、自分が死んだ時、配偶者が亡くなられた時、家族や知人に迷惑をかけるのを避けるために、終活は必要です。

有野:オトンの件で身に染みているはずなのに、銀行口座も複数あるし、このままだと面倒をかけてしまいそうですね……。通帳があれば金融機関はわかるけど、ネットバンクだと紙の記録がないから、きちんと伝えておかないと、あるかないかもわからへん。あることは伝えておかないと、もったい無い。それは嫌やから終活は早くしないと! 認知症の事は考えたこともなかったです。

井戸:親が亡くなられたり、認知症を発症してしまったりした場合、家をどうするのか、介護が必要になった時はどうするのか。自分で介護をするなら、仕事はどうするのか。実家の収入状況はどうなっているのか……など、前もって考えておく必要があるんです。考えておかないと、いざそれが起きた時、何をすればいいのかわからず、パニックになりかねません。

有野:先生の言う通りですね。オトンが亡くなった時、「あ~、聞いておけばラクやったのにな」って思いましたもん。なんでしてなかったんやろ、って家族みんなで後悔しました。

井戸:還暦は「暦(こよみ)が還(かえ)る」という意味で、干支が一回りして生まれ変わることを祝う行事ですが、遅くてもその還暦を迎えるころまでには、一度自分の人生を整理して、子どもや孫など次の世代が困らないように「終活」をしておくべきです。自分はもちろん、両親がしていない場合は、終活をするように話をしていくことが大事ですね。

有野:なるほど、本当にその通りやなぁ……。オカンも僕も全く終活をしていないし、今回の授業を聞いて、急に焦ってきました。

井戸:「終活」をきちんとやろうと思うと、やることがたくさんあるんです。いきなり「終活しなきゃ!」って前のめりになると、途中で心がくじけてしまうかもしれませんし、焦る必要はありません。一歩一歩階段を上がれるよう、まずは終活に向けた心構えをしていきましょう。

有野:心構えかぁ。とりあえず今日、帰ったらサイン付きとそうじゃないグラビア写真集を分けるところから、一歩一歩始めようと思います!

井戸:そこからなんですね(笑)

有野:自分が死んで娘たちに見られる時のことを考えると、急に恥ずかしくなってきたんです(笑)

次回(7月11日配信予定)は「終活で整理しておくべきこと」について聞いていきます。

有野晋哉
1972年2月25日生まれ。大阪府出身。テレビやラジオ、CM、雑誌の連載などマルチに活躍。コンビで公式YouTube「よゐこチャンネル」も開設しており、幅広い世代から支持を得ている。自身が50歳を迎えた2022年に、お金にまつわる知識の大切さに目覚め、日々勉強中。

井戸美枝
井戸美枝事務所代表。神戸生まれ、関西大学社会学部卒。1990年に社会保険労務士の資格を取得し、神戸市内に社会保険労務士事務所を設立。1993年にはAFPの資格を取得。1996年にはCFP認定者となり、社保労務士に加えてFP業務も展開する。生活に身近な経済問題や年金・社会保障問題を中心に、新聞や雑誌で連載を持つなど幅広く活躍。「難しいことでもわかりやすく」がモットー。著書に『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!増補改訂版』(日経BP)ほか多数

ライター:新井奈央

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