東京で生きる被爆者の姿捉え 「長崎と広島だけの話ではない」 島瀬美術センターで写真展 9日まで

東京在住の被爆者を捉えた写真が並ぶ会場。撮影した田中さんは「被爆者の(反核の)思いを伝えたい」と話す=佐世保市、島瀬美術センター

 長崎県佐世保市出身の写真家で、東京在住の被爆者の日常を撮影している田中真衣さん(36)の写真展が、同市島瀬町の島瀬美術センターで開かれている。都外での展示会は初めてで、10年間で捉えた写真約60枚が並ぶ。東京で生きる被爆者の姿から「原爆は長崎と広島だけの話ではないと伝えたい」と話す。9日まで。無料。
 田中さんは大学進学を機に上京。1年の夏、8月9日にサイレンが鳴らないことに違和感を抱いた。「東京で原爆を考えるきっかけになるのでは」と考え、2013年から被爆者の撮影を開始。在京被爆者団体「世田谷同友会」(20年に休会)の協力を得て、会員の取材を始めた。会社勤めの傍ら、旅行や行事に同行。自然体の姿を捉え続けた。
 写真展で写っているのは78~97歳の長崎、広島の被爆者延べ30人。思い入れが深いのは、長崎で被爆した同会会長の木村徳子さん=当時(85)=。休会が決まった直後の一枚に「『あんまり近くで撮らないでよ~』とはにかむ姿はまるで少女のよう」と説明文を添えた。
 木村さんは翌年、病のため突然この世を去った。10年間に、展示写真に写っている人のうち2人ほどが死去。体が弱っていく姿も目の当たりにし「覚悟はしていたけれど…。(活動を)続けていかないといけない」とかみしめる。「この世から原爆がなくならない限り、被爆の歴史は続く。被爆者の切実な(反核の)思いをしっかり伝えたい」と静かに語った。

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