【東京新富】ボンボローニがウマすぎてビビった!一度食べたら忘れられないイタリア菓子屋

【Litus】 切った瞬間、ボンボローニからクリームがとろけだした

はじめて食べたとき、口のなかで甘い爆弾が破裂したようだった。

イタリア語で小さな爆弾という意味の「ボンボローニ」は、まさにスイーツの爆弾だった。

『Litus (リートゥス)(中央区新富)』では、オーナーシェフの塩月紗織さんが毎日ボンボローニを手作りしている。

サイズは大(550円/以下すべて税込)とミニ(350円)の2種類。クリームはカスタードとリコッタチーズとピスタチオの3種類。

【24枚】東京新富のイタリア菓子屋「リートゥス」

ボンボローニは生ドーナツでもドーナツでもないと思います

【Litus】リートゥスのオーナーシェフ、塩月紗織さん。オートメーション化すればもっと簡単に作れるはずだが、ひとつひとつ丁寧にボンボローニを作っている

サイズとクリームを告げると、厨房で塩月さんがひとつひとつクリームをしぼってくれる。作り置きをしたほうが楽だし、簡単だと思うのだが、それを良しとしない。

「クリームをつめたものを冷蔵庫で保管するとかたくなるので、ひとつひとつクリームをつめてお渡ししています」

だからこそ塩月さんのボンボローニは齧った瞬間、とろとろのクリームが口のなかで弾け散るのだ。

【Litus】 これがボンボローニの材料

「ドーナツと同じ生地かと訊かれることもありますが、生地も作り方もドーナツとは違います。やっぱりボンボローニのレシピなんですよ」

味もドーナツではないと塩月さんは力説する。

【Litus】 ボンボローニの生地を1時間ほどミキシングしている

卵黄、牛乳、強力粉、無塩バター、イースト菌、塩。毎朝5時頃からこれらの材料をミキシングして生地を作る。

発酵させたものをひとつひとつ型でくり抜く。

余った生地を丸めて整形すれば、ボンボローニを何個か作れそうだが、それを良しとしない。

「整形しても発酵具合が異なるので、もったいないけど処分します」

ボンボローニの生地を4個ずつ160度に熱したサラダ油で揚げていく。

「こげないように低温で揚げます。片面ずつ揚げるので油に接した部分がふくらみ、横に線ができます。この線があるのがボンボローニの特徴です」

揚げたてのボンボローニにグラニュー糖をつけたものをケースに並べて常温で保管する。

注文ごとにクリームを横からしぼり、お渡しします

【Litus】 ボンボローニの横からクリームをつめて渡してくれる。テイクアウトも可能だ

注文ごとにクリームをしぼる。イタリアでは脇からクリームを入れて、立てておくという。けれど、塩月さんは横からクリームをしぼる。

「寝かせた状態で箱に入れたほうがボンボローニが崩れにくいので、横から入れることにしました」

【Litus】 ミキサーで作ったボンボローニの生地を1時間かけて発酵させる

ボンボローニのレシピを覚えたのは、お菓子作りを学ぶために渡ったイタリアだった。

2011年からシチリアのホテルレストランで2年、その後、北イタリアのホテルレストランで3年研鑽。

ボンボローニはイタリア全土で食べられているそうだが、はじめて見かけたのは修業をはじめたばかりの頃のシチリアのバールだった。バールで朝、お菓子のようなパンのような丸いものを食べるイタリア人を何人も見かけた。

【Litus】 揚げたてのボンボローニにグラニュー糖をまぶした状態で保管する

「最初は『なんだろう』って食べずに見ているだけでした。はじめて食べたとき、おいしくて感動しました。ボンボローニはイタリア人の朝ごはんでした」

中身はカスタードとアプリコットジャムとチョコレートとラズベリーが定番。

「イタリア人はカスタードしか食べません。イタリアのカスタードはさっぱりしていて軽いんです。私もイタリアで覚えたレシピでカスタードを作っています」

【Litus】 ボンボローニとカンノーリを頼むと、奥の厨房で塩月さんがクリームをしぼってくれる

2018年に帰国し、『スターバックス コーヒー ジャパン』に入社。スターバックス コーヒーが手がける『プリンチ』で惣菜やお菓子を作ったり、開発を担当。

ところが、仕事中ボンボローニが頭からはなれなかった。

「イタリアで料理の修業をした人なら誰でもボンボローニを知っているはず。なぜこんなにおいしいお菓子を作らないのだろうって思ってました」

【Litus】 はじめて修業した南イタリアをイメージし、渚という意味のリートゥスと命名した

かつて某リストランテが小さなボンボローニをドルチェに出していたらしい。けれど、ボンボローニを販売する店はなかったかもしれない。

ボンボローニ愛、イタリア菓子への思いが徐々に頭のなかで発酵。

2021年5月に『リートゥス』をオープン。

イタリア人が食べに来てくださるようになりました

【Litus】 手にした瞬間、その重たさに驚くはずだ。イタリア人が「イタリアよりもおいしい!」と絶賛するカンノーリ

塩月さんが作るボンボローニと「カンノーリ(900円)」を店先のイートインコーナーで食べるイタリア人が増えてきたそうだ。

カンノーリは小さな筒という意味。朝揚げた筒状の生地に、注文ごとにイタリア産リコッタチーズのクリームをつめ、シチリアはブロンテ産ピスタチオを添えて渡してくれる。

【Litus】 カンノーリの生地。これにひとつひとつリコッタチーズのクリームをしぼってくれる

軽そうだが、かなりどっしりしている。女性なら1個食べるとお腹がいっぱいになるかも。

「エスプレッソを飲みながらカンノーリを食べた後、ボンボローニを食べるローマ人がいます」

塩月さんのカンノーリとボンボローニの虜になるリストランテのシェフが急増している。

わざわざ横浜から食べに来るシェフがいるかと思えば、塩月さんのカンノーリに刺激を受け、試作をはじめたシェフもいるそうな。

【Litus】 ババ。酒好きな方へのプレゼントにも最適

この日15時頃、若い男性2人が来店。お目当てのお菓子が完売と聞き、残念そうに帰っていった。2人が買いに来たのは「ババ(780円)」。ブリオッシュにラム酒たっぷりのシロップをひたしたお菓子だ。

「お酒をきかせているせいか、男性に人気が高いです」

塩月さんのババはラム酒の香りも味も半端ない。酒好きならぜひお試しを。

【Litus】 広島産無農薬栽培のレモンで作る「レモンケーキ」

「レモンケーキ(600円)」もおいしかった。プーリア産レモンジャムと、ブロンテ産ピスタチオをあしらった秀作。

酸味が強いが、爽やかで、さっぱりしていて、しっとりしている。

「ティラミスやビスコッティも作っています」

【Litus】 エスプレッソはカップに入っている

イタリアのお菓子といえば忘れてはならないのが、「ティラミス」(650円)。

重たい味わいのティラミスが多いが、塩月さんが作るこのお菓子は軽い仕上がりで、爽やかな甘さ。

私は塩月さんが作るビスコッティのファンだ。年末に販売するビスコッティの詰め合わせは食べる価値がある。

「今年のクリスマスはパネトーネを焼こうかどうか考えています」

【Litus】 仕事をしながらイタリア語を学び、資金をため、イタリアでお菓子作りを学んだ。この人をひと言で表現するならパッションの人。燃えるお菓子職人

塩月ファンとしては、『カフェ リートゥス』をオープンしてくれないものかと大いに期待している。

【Litus (リートゥス)】

◼︎住所/東京都中央区新富2-9-6
◼︎電話/ 03-6275-2797
◼︎営業時間/11時~18時
◼︎定休日/火水曜

(うまいめし/ 中島 茂信)

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