ウイスキーに挑戦 佐世保・梅ケ枝酒造が長崎県内初の試み 兄弟3人、市場参入に情熱を注ぐ

蒸留器(後方)を調達しウイスキーの生産に情熱を注ぐ社長の長野哲也さん(中央)ら=佐世保市、梅ケ枝酒造

 佐世保市城間町の梅ケ枝酒造が、長崎県内初の試みとして「ジャパニーズウイスキー」の生産に乗り出した。大麦の麦芽を原料とするシングルモルトウイスキーを製造する。現在は「蒸留」という工程までの作業を続けており、これを木製の樽(たる)で3年以上熟成させて商品化する。社長の長野哲也さん(50)は「全国、世界に向けて梅ケ枝の味を追求したい」と思いを語る。
 江戸中期、1787年創業の造り酒屋。長男の哲也さん、次男の剛士さん(47)、三男の太伸さん(46)の兄弟3人が伝統を継承しながら、新たな感覚を生かして酒造りに励んでいる。
 2019年にジン「よきつき-令月-」を発売。これも県内初となる取り組みで、その頃から「次はウイスキー」と構想を描いていた。
 「設備面でハードルが高くなるが、兄弟で力を合わせて新しいことに挑戦したい。3人で夢を実現する」。蒸留器(ドイツ製)の購入、貯蔵倉庫の整備、冷却水を確保するための井戸掘りなどの課題をクリアし、生産環境を整えた。
 英国産の麦芽を糖化させ麦汁にして発酵、続いて蒸留。1サイクル4日間の工程で、160リットルを製造する。蒸留したものをアルコール度数60度に調整した原酒を、200リットルの「バーボン樽」に詰め込む。11月までに計7千リットル、35樽分(ボトル1万本分)を仕込む予定。樽の中で3年以上寝かせ琥珀(こはく)色に熟成させて出荷する。
 毎年、日本酒の仕込みの後にこの作業を重ねていき、試行錯誤しながら味わい、風味を調えていく。ジャパニーズウイスキーの製法には、日本洋酒酒造組合が定める基準があり、蒸留方法などさまざまな条件が味を左右する。サントリーの「山崎」などが世界的に有名で、佐世保発のブランド開発に期待がかかる。
 杜氏(とうじ)の剛士さんは「まずはオーソドックスなスコッチの製法を基本に本場の味を目指す。いろいろ試して、個性を表現していきたい。楽しみ」と、ウイスキー市場参入に情熱を注ぐ。

ウイスキーを熟成させる「バーボン樽」について説明する杜氏の剛士さん

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