西高のコサカ君

 おおおっ、この人…。4日の経済面。役所の人事異動を伝える短行の記事でこんなに心が弾むのは最初で最後かも、と考えながら何回か読み返した。「え? 西高のコサカ君?」と同じ発見に興奮した人はゼロではないはず、と強く確信しながら▲懐かしい大橋球場-。マウンド上の彼の武器は「豪」とか「快」とかの修飾語は付きにくく、でも、とても丁寧にコントロールされた速球と、よく曲がるカーブだ。仲間たちの勝負強い打撃に支えられて彼とチームは勝ち進む▲走者を背負ったピンチの場面、額の汗をシャツの袖で拭いながら野手の激励に応える時の「ニコッ」と音がしそうな爽やかな笑顔を今も鮮明に覚えている。42年前の夏▲1日付で新しく長崎税関長になった小阪好洋さんは、1981年の夏の甲子園に出場した長崎西高野球部のエース。1学年下の帰宅部員だった筆者をアルプス席に連れていってくれた恩人の1人だ。そこで遭遇した超高校級左腕とその先の出来事は、きょうは書かない▲夢の舞台を目指す球児たちの熱戦が今年も始まった。開幕ゲームに登場した私たちの母校は激しい点の取り合いを制して、見事に初戦を突破▲今年の夏も必ず、誰かの“忘れないあの夏”になる。長く消えない記憶と一緒に刻まれるのはどんな名前だろう。(智)

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