但馬活性化の夢に乾杯 養父にウイスキー蒸留所完成 ガラス越しに製造見学、試飲もOK

蒸留所内にある蒸留釜=養父市大屋町中間

 酒類販売などを手がけるウィズワン(大阪府大阪市)が建設していたウイスキー蒸留所「養父蒸溜所」が、兵庫県養父市大屋町中間に完成した。蒸留棟は、観光客らが製造工程を見学できる仕様に。ウイスキーを通じて、観光客らの呼び込みと国内外へのPRを目指す。(吉田みなみ)

 同社は2020年、新規事業としてウイスキーの製造販売に乗りだそうと、市に候補地を問い合わせた。景観の良さと天然水のきれいさ、熟成に必要な寒暖差などの条件で場所を選定。22年4月に着工した。

 敷地面積は約8千平方メートルで、蒸留棟とたる貯蔵庫2棟をつくった。蒸留棟には発酵槽や蒸留釜などを設置。観光客が製造工程を見られるよう2階部分がガラス張りになっており、見学後に試飲できるカウンターも設けた。貯蔵庫は、2棟で計2400個のたるを収容可能。敷設した木製のレールの上にたるを積み重ねる伝統的な保存方法「ダンネージ式」を採用しており、温度や湿度の調整は自然の力に任せる。熟成期間は約3年。

 同社によると、ウイスキーは原酒を蒸留した後、そのままたるに入れて寝かせるのが一般的だが、同社は蒸留した酒をすぐにろ過して不純物を取り除き、雑味をなくす製法を取る。製造時にできる麦かすと蒸留かすは栄養価が高く、近隣で但馬牛を育てる畜産農家に飼料として供給する。

 現在は国税庁に酒類製造免許を申請中で、7月中に稼働を始める見通し。1年目は約6.5万リットルを、2年目以降は13万リットルを製造する。初出荷は26年7月ごろを予定し、当面は700ミリリットル詰めで8千~1万円を見込む。

 近年、海外で人気の高い「ジャパニーズウイスキー」として、将来的には生産量の6割を欧米やアジアで販売したいという。今回、養父市や豊岡市などから新たに5人を雇い入れ、稼働状況によってはさらなる雇用も検討するという。

 7月6日にあった完成式で、八塚佳和副社長(45)は「これからがスタート。養父市でできるウイスキーを国内外に広めていきたい」とあいさつ。広瀬栄養父市長は、ふるさと納税返礼品としての出品も期待しており、「ウイスキーと地域の食や文化を結びつけ、活性化の起爆剤となるよう応援したい」と語った。

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