乳幼児の救命処置、大人との違いは?熱中症の危険信号は? 子守る心構え、救急職員に聞く

救急隊員のアドバイスを受けながら乳幼児らへの胸骨圧迫について学ぶ参加者(長岡京市天神4丁目・長岡京消防署)

 新型コロナウイルスの法的位置付けが変わり、今年の夏は行動制限が大きく緩和された中で迎える。夏休みにかけ、子どもと一緒に海へ山へ、外出する人も多いだろう。一方、体が小さい乳幼児は水の事故など生命の危険がある場合に行う救命処置が大人と異なり、熱中症になるリスクも高いとされる。かけがえのない命を守るために何ができるか。京都府の乙訓消防組合の救命講習を取材し、救急職員に心構えを聞いた。

 救急隊員の指示に、保護者らが真剣なまなざしで聞き入る。5月下旬、長岡京市天神4丁目の長岡京消防署。募集を始めてわずか2日目で定員に達した普通救命講習で、参加者が子どもを想定した人形を使って緊急時の対応を学んだ。

 呼びかけに応答がないことを確認すると、まず周囲の人に119番通報や自動体外式除細動器(AED)の用意など応援を要請。続いて正常な呼吸がないと判断し、すぐに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めた。「胸部の3分の1くらいが沈むように押してください」と救急隊員からアドバイスを受けながら、参加者は心肺蘇生法の手順を確かめた。

 乳幼児の救命講習に対するニーズは高まっている。同組合や2市1町の消防署で実施した回数は2020年度は2回、21年度は0回だったが、22年度は9回。個人で参加できる講習会の頻度を増やした本年度は、5月末までの2カ月間ですでに3回行っている。

 乳幼児の救命処置は大人とどう違うのか。

 まずは胸骨圧迫。両手を重ねて手のひらで胸を押す大人に対し、乳児は指2本で、幼児は片手で行う。人工呼吸では自分の口を相手の口に密着させる大人と異なり、口と鼻の両方を覆って息を吹き込むことがある。AEDの電極パッドについても胸部の2カ所に貼る大人に対し、胸郭を挟むように胸と背中につける。同組合消防本部の下川渚救急課救急係長は「正常な呼吸の見極め方、処置の進め方などこつが必要な部分もある。講習で体験してほしい」と語る。

 もちろん、救命処置を行う事態になる前の予防が重要だ。夏場に増える水の事故では、不規則な流れや急な深みがある海や川だけでなく、水深の浅い自宅のビニールプールや水をためた浴槽など身近にも危険因子はあり、子どもの行動から目を離してはならない。

 また高温多湿の夏は熱中症の危険が高い。特に体が小さい子どもは地面からの照り返しを受けやすく、体温調節機能も未熟。意識を失うと、正常な呼吸ができなくなる恐れもある。同組合消防本部の竹上宏救急課長は「子どもは遊びなどに熱中してしまうもの。保護者が子どものことをよく見てほしい」と訴える。

 竹上課長によると、熱中症の危険信号は、「顔が赤い」「大量に汗をかいている(汗が急に止まる)」「表情がぼんやりしている」など。その際は涼しい場所で休ませ、落ち着かせて水分補給させる必要がある。竹上課長は「普段との違いに早く気付いてあげることが大切だ。早めの対応が欠かせない」と呼びかける。

■救急車を呼ぶか迷った時は「#7119」

 呼吸や脈、意識がないなどの場合はためらわず119番通報し、救急車到着まで救命処置を行い続ける必要がある。一方で、救急車を呼ぶか迷う場合もある。その際は救急安心センターきょうと「#7119」または「0570(00)7119」に電話すれば、看護師ら医療の専門家から救急度に応じたアドバイスを受けられる。いつでも対応する。

 子どもの急病やけがは「#8000」または「075(661)5596」でも専門的対応や育児相談が受けられる。京都府内在住の15歳未満の子どもや家族らが対象。土曜のみ午後3時~翌朝8時で、それ以外は午後7時~翌朝8時。土曜が祝日や年末年始の場合は午後7時~翌朝8時。

 いずれも通話料は相談者の負担。

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